キャラクターの作り方 ご都合キャラにしないコツ

シナリオディレクター編
読者というのはキャラクターを見たいために読むものです。 つまり、小説の中でストーリーよりもキャラが重要になってきます。 なので、キャラクターには細心の注意を払わないといけません。 読者はキャラクターが「そのキャラクターらしくない行動」、いわゆるキャラブレすると一気に冷めてしまいます。 そうならないように、キャラクターを描いていかなければなりません。 今回はご都合主義にならないキャラクターの作り方を解説していきます。 最初に結論を書くと、「キャラクターに台本を渡さない」です。 では、詳細を解説していきましょう。

読者はキャラクターが見たい

どんなに素晴らしいストーリーでも、「キャラクターに魅力がない」と読者は読むのを止めてしまいまいます。 逆にストーリーが微妙だったとしても、キャラクターが魅力的であれば読み続けます。 わかりやすい例をあげてみましょう。 あなたは「面白い」と思った作品を「何度も読み返した」ことがあるはずです。 もし、「ストーリー」を見るのだとするなら、「二回目」は読まないはずです。 なぜなら、「ストーリー展開は知っている」からです。 ゲームと違い、読むたびに内容が変わることはありません。 なのに、なぜ、「何度も」読むのでしょうか。 これは「キャラクターの台詞や掛け合い」、「キャラクターの戦い」など、「キャラクター」を見たいからでしょう。 キャラクターというのは「作品の命」といっても過言ではないのです。 少し、ゲームでの話をしましょう。 ゲームでも、色々な作品と「コラボ」をします。 そして、その際にキャラクターのイラストはもちろん、ストーリーにも「監修」が入ります。 ストーリーはその作者が書くわけではなく、コラボする側のライターが書きます。 基本的にストーリーの内容に対してNGが出ることはあまりありません。 では、どこに対して監修が入るかというと「台詞と行動」です。 もし、キャラクターの台詞や行動がズレていると、「キャラクターが壊れてしまう」ので、ここは監修元がしっかりと確認します。 そのくらい、キャラクターというのは重要だとされています。 また、これは編集の方から聞いた話ですが、新人賞では「キャラクターを重視する」というものがあります。 これも、読者はストーリーよりもキャラクターを見たいと思っているからになります。

人は台本通りには動かない

あなたは突然、見知らぬ人から「コンビニでジュースを買って来てくれ」と言われたとしたら、従うでしょうか? ほとんどの場合は断ると思います。 これは、人は「自分の得になること」と「しなくてはいけないこと」以外はやろうと思わないからです。 例えば、自分もコンビニに行く理由があった場合は、「ついでで」行こうと思うかもしれません。 頼んできた人が魅力的な異性であれば、「仲良くなれるかもしれない」と思い、行こうと考えるかもしれません。 頼んできた人が凄く困ってる状態であれば、助けてあげようという「自分の満足感」の為に行こうと考えるかもしれません。 何にしても行こうと思うには「理由」が必要です。 これは「キャラクターでも同じ」です。 小説や漫画でよくある設定の中で、「困っている人を放っておけない性格」というのがあります。 主に、主人公がこの性格であることが多いです。 この設定は「ヒーロー性」があり、読者が思う「憧れの部分」をキャラクターに持たせるためです。 ですが、この「困っているいる人を放っておけない」という設定を免罪符に、なんでもかんでも「困っている人を助ける」キャラクターになっていることがあります。 作者は「こういう設定だから」と考えて、特に「理由がなく」行動させますが、読者からみると「人間味がなく、ストーリーの都合」で動いているように見えてしまいます。 よくあるストーリー展開として、主人公が女の子を助けるというものがあります。 助けられた女の子が主人公を好きになるという、テンプレート展開です。 助けられた女の子が主人公を好きになるというのは特におかしいことはありません。 「助けてくれた」という「恩」に対しての感謝と、ヒーロー性(邪推すると王子様に助けられた私はお姫様的な感覚になる)で相手を好きになるというものです。 ですが、最初の「主人公が」女の子を助けるという部分はどうでしょうか? 現実で考えれば、「その女の子が可愛いので、助けたら仲良くなれるかも」という「得」を想像して助けます。 ですが、小説の中では主人公というのは大抵「下心がない」ことが多いです。 では、その主人公の「得」はなんでしょうか? きっと作者は「困っている人を見つけたから助けるという設定だから」というでしょう。 ですが、なんの得もないことをするのは「人間らしさ」の欠如になります。 そして、「ストーリー展開の都合」で動いているようにしか見えません。 ※ここに違和感がない読者は「主人公に自分を投影」しているので、「これから可愛い女の子に好かれる」と『期待』しているからです。 ただ、行動する理由に対して、行動を起こす壁というものもあります。 これは例えば、足元にボールが転がってきて、子供が「こっちに投げてください」と頼まれた場合、ほとんどの人は投げ返してあげると思います。 これは投げ返すだけなので、行動を起こす「壁」が低いのと、「こんな簡単な頼みごとを断ると嫌な人間と思われそうというのを避ける」という「必要な」理由というものがあるからでしょう。 これをもう一度、「主人公が女の子を助ける」に当てはめてみましょう。 大体のパターンは、「主人公が強い」ので、「助ける」という行動を起こす「壁」が低いから、というのがあります。 足元に転がってきたボールを投げ返すくらいの気軽さで助けるのでしょう。 ただ、そんな気軽さで助けているなら、なぜ、既に周りに女の子がいないでしょうか? 「困った人がいたら放っておけない性格」なら、今までも色々な人を助けていたはずです。 ですが、なぜか主人公は「孤独」というパターンが多かったりします。 また、中には「自分が弱い」と思っている主人公が「実は周りが引くくらい強い」ということがあります。 冷静に考えて見てください。 「自分は弱い」と思っている主人公が、困っている女の子を「気軽に助ける」でしょうか? 大けがを負う可能性が高いですし、最悪、命を落とす可能性だってあるわけです。 これは行動を起こす「壁」が高いはずです。 なのに、気軽に人を助けるというのは違和感がないでしょうか? もう一つ、よくあるパターンとして、助けたヒロインが、実は巨大な組織に追われているというものがあります。 このパターンでも、主人公は「ヒロインが困っている」という理由だけで、巨大な組織に立ち向かいます。 命を落とすかもしれないのにです。 確かにこれはヒーロー性が強く出るので、よく使われる流れです。 別にこの流れをやってはいけないというわけではありません。 この流れで有名な作品としては『天空の城ラピュタ』があります。
空から落ちて来た「シータ」を主人公のパズーが助けるのですが、シータは巨大な組織に狙われています。 一度はその組織にシータは捕まってしまいますが、パズーは助けに行くことを決意します。 助けるという行動の壁が高いのに、パズーの行動に違和感を覚える視聴者は少ないでしょう。 それはなぜかというと、パズーは元々の目的として、「ラピュタを見つけて、父親の無念を晴らす」というものがあります。 そして、シータは「ラピュタ」に関連する、シータを助ける中で「ラピュタ」を見つけられるという、目的のリンクがあります。 さらに、このシーンは中盤くらいです。 パズーとシータは親交を深め、お互いを「大切な人」と思い始めている状態になっています。 このように、行動を起こす壁が高くても、それを乗り越えるほどの「理由」を提示しているというわけです。 もし、これが、冒頭シーンで、シータがラピュタと関係なく、単なる家出少女だったとしたら、パズーが命をかけてシータを助けに行くという流れに違和感が出てくるでしょう。 何が言いたいかというと、「困っている人を助ける」という設定だけで、ストーリーの都合で行動させてはいけないということです。 例え、「困っている人を助ける性格」だったとしても、「助けるための壁の高さ」に見合う、「理由」が必要ということです。 「キャラクターの行動する壁の高さ」に見合う「理由」が用意できそうにない場合はどうするべきでしょうか。 ここで強引に進めるのは簡単です。 ですが、その場合、「ご都合主義」になり、「キャラクターとしての魅力」が消えてしまいます。 この場合は「ストーリーや設定の方を変える」という方向で考えましょう。 つまり、「そのキャラクターがそう行動をせざるを得ない」ようにストーリーや設定でキャラクターを追いこむのです。 上の例で考えてみましょう。 町中で女の子が悪いそうな人たちに絡まれているのを助けるという展開です。 ここに理由を付けるとした場合、もちろん「女の子が可愛いから」という理由を付けるのもいいでしょう。 もし、主人公に下心を入れたくないのなら、「一文無しになっていて、丸1日、何も食べてない」という流れを入れてみるというもよいでしょう。 「助ける代わりにご飯を奢ってもらおう」というのでも、十分、助ける理由になります。 あとは、女の子がちょっとした知り合いだった場合でも状況は変わってきますし、逆に、絡んでいる男たちの方に、「またあいつらか!ったく!」ということで、「男側を倒したい」という理由を付けるのもありですね。 このようにパッと考えてみても、色々とやり方はあります。 もう一点、女の子が巨大な組織に狙われている場合のことも考えてみましょう。 これは上のちょっとしたいざこざを助けるのとは、行動を起こす壁の高さが違います。 なので、理由ももう少し強くする必要があります。 天空の城ラピュタのように、「元々の主人公の目的」にリンクさせるというがあります。 他は、女の子が「亡くなった妹に似ている」という展開で「女の子と妹を重ねる」ことで、助けたいという思いを引き上げる方法があります。 あとは、女の子を狙っている「巨大な組織」側を調べているという場合も、助けることで目的をリンクさせるという手があります。 このように、ストーリーの展開と設定のみでキャラクターを動かすのではなく、行動を起こす壁に対して釣り合う理由を用意するといいでしょう。 理由があるのとないのとでは、読者が受ける印象は全く違います。 そこを手を抜かず、しっかり理由を付けることで、キャラクターの魅力もグッと引きあがります。 キャラクターは作品の命です。 しっかりとキャラクターに寄り添って、書いていきましょう。 それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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