漫画の描き方 ボス戦について

シナリオライター編

バトル漫画で最高潮に盛り上がる場面といえば、ボスキャラと主人公との戦いです。
ですが、せっかくのボスキャラとのバトルもやり方を間違えるとかえって読者は冷めてしまいます。

ではボス戦を盛り上げるにはどうしたらいいのでしょうか。
今回はボスバトルについてを解説していきます。
※あくまでボス戦に絞っての解説になります。中ボスやその他のバトルに関しては考慮していませんのでご注意ください。

タイマンか共闘か

まず考えるべきなのはボスと戦うときに主人公のみで戦うか、もしくは仲間と一緒に戦うかです。

もちろん、それまでのストーリーの流れにもよりますが、ポイントとしては「どういうボスキャラ」なのかが重要になってきます。
下手をすると、ボスキャラによっては仲間と一緒に戦うと「弱いものいじめ」に見えてしまう恐れがあります。
逆に主人公一人で戦うと「仲間いらないんじゃない」ということにもなりかねません。

弱いものいじめにならないように、ボスを強くするという方法があります。
ですが、ボスが強いのは当然で、基本の前提条件の部分になります。
ボスが強いという以外にも、考慮しなければならない点があります。

仲間と一緒に戦うべきボス

では仲間と共闘する際のボスについて考えていきましょう。

まずは例としてボス戦で仲間と共闘する作品を挙げていきます。
・NARUTO
・鋼の錬金術師
・ドラゴンボール
・ロトの紋章
・ダイの大冒険
・トリコ
・ジョジョの奇妙な冒険(3部、5部)

挙げるときりがないので上の7本に絞ってみました。
次にボスについて見てみます。

・NARUTO:大筒木カグヤ
・鋼の錬金術師:ホムンクルス(お父様)
・ドラゴンボール:フリーザ、ブウ
・ロトの紋章:大魔王バーン
・ダイの大冒険:イマジン
・トリコ:ネオ
・ジョジョの奇妙な冒険:ディオ、ディアボロ

上のボスキャラの共通点はなんでしょうか。
それは主人公とは「別の存在」というのがあります。
つまり人間ではありません。

では、なぜ人間ではない場合は弱いものいじめに見えないのでしょうか。
それはボスの「存在自体が卑怯」となるからです。

「生まれた、誕生した時点で主人公たちとの差が大きい」という場合です。
ボスの存在自体が卑怯なので、主人公たちが仲間と戦ったとしても卑怯ではないと見えるのです。
ジョジョの奇妙な冒険のディオは最初は人間でしたが、ボスとして戦うときには吸血鬼になっています。
吸血鬼は人間とは違い、回復力が高く、身体能力も人間とは比較になりません。
仲間と一緒に協力しても卑怯ではありませんし、仲間と一緒に戦うからこそ、盛り上がっていきます。

また、NARUTOのサスケ戦やジョジョの奇妙な冒険の吉良吉影戦ではボスキャラは同じ人間なので仲間と一緒に戦わず、主人公とのタイマンという形で戦っています。

他の技法としてはボスキャラが「チートな能力を持っている」というのもあります。
ジョジョの奇妙な冒険でいうと、ディオやディアボロの時間を操作する能力やブリーチの愛染のような五感を支配する能力などが挙げられます。
ですが、ここはかなり難しい技法だと思います。
何を持って「チート」とするかがポイントになるのですが、「チート」だと思うポイントが読者によって違います。
なので、読者によって仲間と一緒に戦うのが「卑怯か」「そうでないか」が変わってしまうのです。

ディアボロ戦や愛染戦は盛り上がったかというと、自分はそうは思いませんでした。

タイマンすべきボス

こちらは共闘すべきボスとは逆の場合と考えれば早いでしょう。

パッとタイマンで盛り上がる漫画として思い出せるのは下記になります。
・ワンピース
・刃牙
・幽遊白書
・キングダム
・ろくでなしBLUES
・僕のヒーローアカデミア

今の主流としてはボスとはタイマンという感じではないでしょうか。

では、細かく解説していきます。
ワンピースのクロコダイルとの戦いは、ベストバウトに挙げる人も多いのではないでしょうか。

クロコダイルはルフィたちが初めて「七武海」を倒すという流れです。
たしかに強大な敵ですが、ここでルフィがゾロやサンジと一緒に戦ったらどうでしょうか?
盛り上がったバトルになるかもしれませんが、タイマンで決着するよりもスッキリ感は薄くなるのではないでしょうか。

クロコダイルは七武海で強大な力を持ってますが、同じ人間です。
そして悪魔の実の能力者ですが、ルフィも同じです。
そのような相手に複数人で戦うと、やっぱりどこか「卑怯」な感じがしてしまうのではないでしょうか。

たとえば刃牙の「範馬勇次郎」というキャラクターがいます。
生まれついての「地上最強の生物」というチートな実力者です。
ですが、刃牙が仲間たちと勇次郎に挑んだらどうでしょうか?
たとえ勝ったとしても、盛り下がってしまいます。

ろくでなしBLUESも同じになります。
相手は同じ人間で不良です。
それを仲間と一緒に戦って勝ったとしても、誰も感動しません。
タイマンだからこそ、熱いバトルになるわけです。

キングダムに関しては戦争のお話ですが、ボスと戦うときはシンは一対一で戦います。
普通に考えて戦争の場合は強敵の場合は囲んで倒すというのがセオリーです。
それでも漫画として考えた際、戦争といえどもタイマンのほうが熱い展開になるのです。

また、幽遊白書の場合はボスは妖怪という存在でも、幽助がタイマンで倒しています。
この場合、たとえ相手が人ではない存在だったとしても、タイマンで倒すと、「存在の壁」さえも打ち破って倒すことで一層盛り上がります。
ですので、ボスが人ではない存在だからといって、必ず共闘するのが正解ともいえません。
そのあたりはどうしたら盛り上がるのかは試行錯誤していきましょう。

タイマンの注意点

たしかにタイマンは盛り上がるバトルです。
ですが、もちろん注意すべき点があります。

それは「状況づくり」です。
どういうことかというと、「なぜタイマンになるのか?」ということです。

漫画の都合上、そうしたほうが盛り上がるというのはあるかと思います。
ですが、「漫画の世界上」ではそうした理屈は通じません。

たとえば、上で例にあげたワンピースを見てみましょう。
クロコダイルとルフィはタイマンで決着をつけています。
たしかに盛り上がりました。
では、あの場にもし、ゾロやサンジがいた場合どうでしょうか?

「クロコダイルとルフィ」の一騎打ちのほうが盛り上がるからといって、ルフィがピンチの状態でもゾロたちがただ眺めていたらどうでしょうか?
違和感があると思います。
「なぜ助けないのか?」「今は国が危機的状況なので、全員で戦うべきだ」ということになります。
なので、クロコダイルと戦う前にルフィは単独行動になっています。
これは仲間が手を出せない状況を作り出すためになります。

タイマンバトルは盛り上がります。
ですが、そこまでの流れも重要になります。
場を整えてから、タイマンバトルに持っていくようにしましょう。

だからといって、全部が全部タイマンにすればいいかというとそうではありません。

共闘でのいいところは、仲間との絆を描けるところです。
苦楽を共にした仲間と一緒に強大な敵を倒すことにカタルシスを感じさせることができます。
逆にタイマンの場合「え? 主人公一人で倒しちゃうの?」ということも起こりえます。
今までのストーリーの流れもとても大切です。

ボスを設定するときは、最初から様々な要素を考えた上で作っていきましょう。

いかがだったでしょうか。
今回はボスと共闘すべきかを解説していきました。
少しでもあなたの参考になっていただければ幸いです。

それでは 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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