小説はセリフと地の文で構成されています。
セリフと同様に重要な地の文ですが、どんなときに入れているでしょうか?
特に深く考えず、感覚で入れていないでしょうか?
実際、地の文にルールというものはありません。
作者の感覚で入れてもよいものです。
ですが、それでは地の文の効果が薄いです。
昨今ではラノベが支流で、「どれだけ地の文を減らし、全体的にライトにするか」という点で、作者は工夫に心を砕いています。
基本的に読者は説明を読みたくありません。
そして、地の文は状況説明のようなものですので、最悪、読者は読み飛ばしてしまう可能性もあります。
ですので、基本的には地の文は最小限にするのがよいでしょう。
では、その地の文ではどういうことを書いたら良いのかを、今回は解説していこうと思います。
最初に結論を書きますと、地の文は『読者に伝えたい事を書く」です。
そんなことは当たり前だろ、と思ったでしょうか。
それでは詳細を解説していきます。
何を伝える文か
セリフが続いているので、一旦、箸休め的に地の文を入れておくか、なんて思って入れたりしてないでしょうか。
私も小説を書き始めたときは、台詞ばかりだとどこか「稚拙に感じられてしまう」という謎の焦りがあり、ところどころに適当に地の文を入れたりしてました。
ですが、これではいけないというのを「シナリオ」を学んだ際に理解できました。
シナリオは監督や役者に、キャラクターの動きや感情などを「伝える」ために、ト書きというのを書きます。
そして、ト書きは画面に映るものを書くものです。
これは小説でも考え方は同じです。
読者に「キャラクターの動きや感情」を伝えるために地の文を書けばいいのです。
では、実際に例を出して考えて見ましょう。
■例
「……そう。やっぱり、あの人が一枚噛んでいたのね」
足を組み直しながら、そう言った。
「そうなんですよ。注意して探って正解でした」
―――――――――――――――――――――
どうでしょうか?
地の文である「足を組み直しながら、そう言った」という部分で、何が伝わったでしょうか?
これでは単に「足を組み直した」ということはわかりますが、「何のために足を組み直した」のかの意図などは全くわかりません。
この地の文の書き方では、適当に入れたとしか考えられません。
次に、こうするとどうでしょうか。
■例2
「……そう。やっぱり、あの人が一枚噛んでいたのね」
足を組み直しながら、ソフィアがつぶやく。
無表情だが、かなりイラついていることがわかる。
「そうなんですよ。探って正解でした」
―――――――――――――――――――――
ソフィアというキャラクターは「イライラすると足を組み直すという癖がある」という意味合いを持たせることができます。
これは予め、ソフィアにはそういう癖があることを前もって書いておけば、足を組むという動作に意味合いを持たせることができます。
また、こういう使い方もできます。
■例3
「……そう。やっぱり、あの人が一枚噛んでいたのね」
足を組み直しながら、ソフィアがつぶやく。
カイルはその太ももから目を離せないながらも、報告する。
「そうなんですよ。探って正解でした」
―――――――――――――――――――――
どうでしょうか。
今度は受け手のカイルがエロいキャラであることと、ソフィアが妖艶な雰囲気を持つことを伝えることができます。
ただ、ここで注意して欲しいのが、「カイルがエロい」ことや「ソフィアが妖艶」だということを読者に伝えることが必要であれば、書くようにしましょう。
逆に、特に伝える必要がないのであれば、この地の文自体、書くべきではないのです。
つまり、このソフィアやカイルがもう出てこないのであれば、この地の文は必要ありません。
地の文ではセリフでは描くことのできない、キャラクターの動作や感情を表現するべきです。
そのキャラの台詞に対して、主人公が「どう思ったのか」なども、必要な状況であれば、地の文で描くべきでしょう。
また、「物」の「説明」も同様に「読者に伝えるべき」のものだけ書くようにしましょう。
例えば、主人公の机に書置きが残されていたとします。
その書置きの紙が「テストの裏」であることや、「文字が綺麗」などといった描写は、後から関係してくるのであれば描くべきです。
ですが、まったく今後、その書置きのことに触れられないのであれば、ただの書置きだけで済ませるべきでしょう。
■天地人は最初に伝えておく
天地人とは「天は時間」「地は場所」「人は人物」のことです。
これは最初に読者に伝えるべきでしょう。
最初に印象的なセリフで読者を引き付ける手法を取った場合でも、できるだけ早く天地人は伝えるようにしましょう。
なぜなら、天地人が示されないと、読者はそのシーンの状況を「思い浮かべる」ことができません。
教室で何気なく話しているのか、屋上で二人きりで話しているのか、誰かに追われて隠れながら話しているのか、などなど、台詞は同じでも状況が違えば「台詞の意味合い」も違ってきます。
正しく台詞の意図を伝えるためにも、なるべく早く読者に天地人を伝えるようにしましょう。
最初はずっと2人が交互に話しているので、ずっとそこには2人しかいないと思い込んでいたら、いきなり3人目が話し出す、なって作品もあります。
その場合、「3人目がいたのか!」となり、「2人だけ」の台詞ではなく、「3人目がいる(聞いている)」台詞になるので、最悪、もう一度、読み直さなければなりません。
というのも、「2人だけ」であれば、それは「本音」である可能性が高いです。
ですが「3人目」がいるとなると、第三者がいるので2人でいるときよりも「本音」である可能性は低くなります。
もちろん、これはキャラクター同士の関係性にも関わってくるので、一概には言えませんが、「最初から3人がいる場で話している」と知っているのと知らないのとでは受ける印象が違うことは頭に入れておきましょう。
いかがだったでしょうか。
まとめると地の文は下記の2点を書いていくことになります。
・読者に伝える必要のあるキャラクターの動作と感情、物の説明
・天地人
これを意識して、どちらにも当てはまらないような地の文であればカットした方がよいでしょう。
説明文は最悪、読み飛ばされる可能性があります。
それを意識して書くようにしましょう。
地の文が全て重要なことであれば、読者も読み飛ばすことはできず読んでくれるはずでしょう。
中には、一人称形式で、地の文を面白おかしく描くことで読んでもらおうと工夫している作家も存在します。
ですが、どんなに面白おかしく書いたとしても「結局は説明」になるので、意味のないことを書いていると読み飛ばされてしまう可能性が高いでしょう。
工夫すべきは「どうやったら読んでくれるか」ではなく「何を読者に伝えたいか」という観点で工夫していきましょう。
それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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