ゲーム開発における世界観の作り方と注意点

シナリオディレクター編

ゲームのストーリーの方向性が決まったら、次は世界観を作っていくことになります。
では、この世界観ですが、どういうものなのか、どこまで作るべきなのかがわからなくなる場合があります。
今回は世界観の作り方とどこまでを作るべきなのかを解説します。

なぜ世界観が必要なのか

ゲーム開発に置いて、ゲームシステムの次に考えなくてはならないのが世界観です。
では、なぜ世界観が必要なのか、また、なぜゲームシステムの次に作らないといけないのでしょうか。

それは世界観は全てのコンテンツの指針となるからです。
ゲームは基本一人ではなく、大勢の人たちの手によって生み出されていきます。

ストーリーパートの背景はもちろん、キャラクター、アイテム、武器、それぞれの画面のUI、ボタンのアイコンなど全ての視覚的に表現されるコンテンツは世界観に基づいて作られなければなりません。
世界観がフワッとしていたり、各コンテンツ担当が自分の思い思いのものを作っていてはゲーム内で統一が取れず、チグハグな感じがしてしまいます。

ですので、しっかりと世界観を作りこむことが必要となるのです。

コンセプトアートが世界観ではない

よく勘違いしている現場があるのですが、世界観と聞いてまずはコンセプトアートを作ろうとします。
たしかにコンセプトアートがあると雰囲気が伝わります。
パッと見ただけで、おおよその世界観が伝わります。
なので、最初にコンセプトアートを作ろうとしてしまうのです。

ですが、コンセプトアートは「世界観が決まってから」作るものになります。
世界観はストーリーにも大きく影響していきます。
ストーリーを面白く見せるためには、設定を変えることも当然出てきます。
ある程度ストーリーを作っていくことで、細部の世界観も確定していくのです。

イラストを最初に作ってしまうと、変更が大変、もしくはイラストに縛られて設定を変えられないということが出てきてしまいます。
それでは本末転倒です。

やはり、ある程度、世界観が決まってからコンセプトアートを作る方がよいでしょう。

コンセプトアートはイメージです。
雰囲気を伝えることに特化していますが、世界観としての資料としてはコンセプトアートだけでは足りません。
ライターにシナリオを発注する際に、コンセプトアートだけを送って書いてくださいと依頼しても「こういう部分はどうなってますか?」とかなり多くの質問が来ることなるでしょう。

コンセプトアートがいけないというわけではありません。
コンセプトアートはもちろん、必ず必要です。
コンテンツを作っていく際に、指針となる要素の1つです。
ですが、コンセプトアートだけでは「世界観」としては足りません。
必ず文章としても、補足する資料が必要となってくるのです。

最終責任者は1人に絞る

世界観を作る際に重要な注意点があります。
それは必ず最終的な責任者、つまり決定権をもつ人を1人にすることです。

当然ですが、この最終的な責任者は世界観を作った人、もしくは世界観を熟知した人を置きます。
全てのコンテンツはこの責任者が最終的なチェックをするようにします。

私も実際にゲーム開発をしていてあったことなのですが、世界観を作るシナリオチームとコンテンツを作るイラストチームが別々に動いているプロジェクトもあります。
最初にシナリオチームが大まかな世界観をイラストチームに共有したのですが、そこからイラストチームが独自にコンテンツを描いていき、シナリオチームに確認せずにFIXしていくという流れでした。
大まかな世界観は共有していたので、致命的なズレはなかったのですが、細かい点がシナリオと齟齬が起き、イラストとシナリオが噛み合っていないところが数多くありました。

この問題が起きたのは、プロジェクトリーダーがコンテンツの最終的な責任者を立ててチーム内に明言しなかったことが原因になります。
なので、各担当者は一体、誰に見せればOKなのかがわからず、結局、各部署の上司に見せてOKをもらい、FIXしていくという流れが出来てしまいました。

コンテンツの最終責任者はテキストとイラストも見れる人で、みんなを引っ張っていくカリスマ性を持っている人がいいでしょう。
(そういう人はなかなかいませんが……)

もしくは設定を作るシナリオ側とコンテンツを作るイラスト側と密に連携を取っていくようにしましょう。

世界観作成の流れ

若干、話が逸れたので戻します。
それでは具体的に世界観を作っていく流れを解説していきます。

まずは方向性

世界観作成で最初にやらなければならないのは、方向性を決めることです。
シリアスなストーリーなのか、ギャグテイストなのか、可愛らしいのか、ダークホラーなのかなど様々なジャンルがありますので、まずはここから決めます。
それにより、雰囲気が決まってきます。

時代設定

次は時代背景のイメージを決めます。
これは古代、中世ヨーロッパ、日本の戦国時代、現代、近未来などにあたる箇所です。

中には「今回はオリジナルファンタジーだから時代背景も一から作る」という人もいます。
たとえオリジナルファンタジーでも、時代背景のイメージを決めておくのは必須です。

ドラゴンクエストは「中世ヨーロッパ」を時代背景のベースにしてあります。
ファイナルファンタジーの1~5までも「中世ヨーロッパ」がベースですね。
ファイナルファンタジー6は、大体18世紀の産業革命のあたりでしょうか。
ファイナルファンタジー7は現代か、やや近未来をベースにしています。
ペルソナは完全に現代をベースとしています。

このように、実際の時代背景をベースにした方が時間も短縮されますし、リアリティが増します。

その世界の技術レベルによって文化が生まれていきます。
ドラゴンクエストの世界でいきなり「スマホ」が出てきたら違和感が出ます。
移動手段は車ではなく、徒歩や馬、船などになるのです。

また、時代背景を決めることでイラスト側でもイメージしやすいというのがあります。
バックボーンとして時代背景があると大きく逸れることはありません。

世界を考える

現実世界の話ではないかぎり、オリジナルの世界を作っていくことになります。
まずは中心となる「国」を考えましょう。

どんな世界観でも「国」は存在するはずです。
人間はコミュニティーを築き上げて繁栄してきました。
コミュニティーを形成していない世界観というのは、かなり特殊な世界観でしょう。

国と言っても色々とあります。
王政なのか、大統領制なのか様々です。
どんな特性を持っているかも必要になってきます。
例えば、軍に力を入れている場合や商業に特化している国などもあっていいでしょう。

また、国は気候や地形によっても大きく特色が変わってきます。
たとえば、山々に囲まれた国であれば、外部からあまり攻め込まれないので、軍に力を入れないでしょう。
ですが、外部からの情報が入ってこないので一般的な技術レベルから劣っているか、独自の技術レベルを持っているなんてことも考えられます。

国については以下を決めておくとよいでしょう。
・どんな地域にある国なのか
・国のトップは誰か
・人口はどのくらいか
・大きな特徴は何か(軍に特化しているなど)
・税収はどのくらいか

これより細かい部分はストーリーを作る際に決めていけばいいでしょう。

一つの国ができれば、他の国についても同じように作っていきます。
なかなか世界統一された国というのも珍しいと思うので、はやり他にも国がある方が自然でしょう。

それぞれ国の設定を作り、友好関係も決めておくとよいでしょう。

人々の生活を考える

その世界には主人公たちしか住んでいないわけではありません。
ちゃんと、一般の人たちが生活していなくてはなりません。
どんな食べ物を食べているのか、どんな仕事をしているのか、どのくらいの平均寿命なのかなどが考えられます。

特に「どんな仕事をしているのか」というのは重要です。
仕事、というのは時代を象徴します。
主に狩りをして生活しているのか、農業をしているのか、工場で物を作っているのか、など技術レベルによって仕事も変わってきます。

また、それに伴って国の在り方や地域のコミュニティー形成などの要素も考えておく必要があります。

ただ、細部まで凝り過ぎると時間はいくらあっても足りません。
そこで、下記くらいを考えておくといいでしょう。
子供、大人(20~30代)の男性と女性のそれぞれの一般的な1日の生活を追っていきます。

何時に起きて、何を食べ、どんな服を着て、どんな交通手段で、どこに行き、何をして、何時に帰って来て、何時に寝るか。
この辺りをリアルに想像できれば問題ないかと思います。
人々の生活が思い浮かべられるくらいの設定があれば、リアルな世界が構築できていることになります。

特殊な設定ほど詳細に決めておく

ゲームに限らず、作品を作る際は何か「特殊」な設定が入ることが多いです。
たとえば、ワンピースでいうと悪魔の実、ブリーチでいうと死神、鋼の錬金術師でいうと錬金術などです。

この特殊な設定がオリジナリティを作り、物語を大いに盛り上げてくれます。

ですが、この特殊な部分の設定をおざなりにしてしまうと、途端にチープになりユーザーは冷めていきます。

ゲームでよくあるのが「特殊なキャラクター」です。
たとえば神の血を引く人間や、特殊な力を継承した人間、召喚獣、何かを擬人化した人間などです。

特殊ゆえに設定するのが難しく、設定を決めないという場合も多々あります。
ですが、この特殊な部分こそちゃんと決めておかなければなりません。

ここがフワッとしていると、ストーリー内で矛盾が出てくる可能性が高くなります。
ユーザーが「あれ? あっちではこういう設定だったのに、こっちだと違う……」ということになりかねません。
それは当然で、設定が決まっていないものを書くライターも、当然フワッとした設定で書くので、そのときの感覚で設定が変わってしまうのです。

そういうことにならないように、設定を決めて資料化しておきましょう。
少なくとも、何によってエネルギーを得るのか、生死の概念(寿命)、年を取るのか、どのように生まれるのか(子供は埋めるのか)などは最低限決めておきましょう。

表に出さなくても決めておく

ある現場の中では「表に出さないから」という理由で設定を決めないことがあります。
たしかに、表に出ないのでゲーム作成という観点でいうと、なくても進めることができます。

ですが、世界観というのは細部に宿るものです。
そして、ユーザーにも伝わる部分です。

しっかりと設定を作っていけば、ちゃんとユーザーにもそれが伝わります。
逆に適当に作っていれば、それもユーザーに伝わります。

せっかく、ゲームシステムでいいものを作ったとしても世界観の部分でユーザーにガッカリさせてしまっては意味がありません。

たとえ、表に出てくる機会がないとしても、内部ではしっかりと設定を作って資料化しておきましょう。

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いかがだったでしょうか。
以上が、世界観の作り形についてです。
少しでもあなたの参考になっていただければ幸いです。

それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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