原作があるシナリオを依頼された場合、どう書けばいいのかわからなくなることがあります。
今回はシナリオライターになると、避けては通れない「脚色」について書いていきます。
映像化、特に映画の場合は一定のファンがついている原作を実写化することが多いです。
世間では大コケと言われている作品でも、完全オリジナルシナリオの映画と興行収入と比べると原作ありの作品のほうが高いということがあります。
そういう背景があり、一定のファンがついている原作を実写化することが多くなっています。
ということは、こうした原作を実写化するシナリオライターの仕事が多くなるのも必然となります。
今は完全オリジナルのシナリオを書かせてもらえること自体が稀でしょう。
余程の有名な脚本家でないと、書かせてもらえないと言っても過言ではないのです。
ですので、脚色の技術を覚えておくと、仕事をもらえる機会も多くなりますので覚えておいて損はないでしょう。
脚色とは
本来は映像ではない小説や、物語ではない事件などを映像化するために作り変えることを言います。
つまりは、元があるものをアレンジしていくことになります。
小説の場合は状況を地の文という文章で、読者に伝えていきます。
これを映像化する際、どのように見せていくかを考えていかないといけません。
恭介がドアを開けて家の中に入る。
という地の文であれば、そのまま「恭介がドアを開けて家に入る」というト書きを書けばよいです。
ですが、
恭介が急いで家へと向かって急ぐ。
このように地の文で書かれていた場合、ト書きに「恭介が走る」と書いても、どこへ向かっているのかがわかりません。
シーンとして、家に着くまでを描くのか、飛ばして次のカットで家の中にいるようにするか、など工夫をしていかなくてはなりません。
また、事件を脚色する場合、単に起こったことを順番に書いていくだけではただの詳しいニュースになってしまいます。
それでは物語としては面白くありません。
やはり、誰を主人公の視点として、どう描いていくかが重要になります。
わかりやすい例としては、歴史の教科書と大河ドラマとの違いでしょうか。
教科書は単に起こったことを羅列するだけです。
ですが、大河ドラマは主人公がいて、事件が起こり、どのように主人公が乗り越えるかをドラマチックに描いていきます。
これが脚色になっていきます。
時間の制限
小説にしても、事件にしてもそのまま忠実に映像化してしまうとかなり長いものになってしまいます。
映像化の場合、必ず時間の制限があります。
映画なら2時間、ドラマなら60分、アニメなら30分などなど、制限が出てきます。
その時間内に納めなくてはなりません。
小説や事件のどの部分を描くかを考えていくのも、脚色になってきます。
逆に短編小説を映画にする、という場合もあります。
その場合は話を膨らませて、2時間にするという技術が必要となってきます。
話を膨らませる場合は、心理描写を表す箇所をエピソードに落とし込んでいくのがオーソドックスになります。
小説では1行の地の文でも、それを表すためのシーンにして描かないと観客には伝わらない場合が多いです。
シナリオを長くするのも、短くするにもシーンの見せ方ひとつで随分と変わってきます。
脚色の種類
脚色は上記で書いたように、映像化する際にはどのようにシナリオ化するか以外にも、どのような方向の物語にするかを考える必要があります。
種類としては以下の種類があります。
1.原作に忠実に書く
2.原作のストーリーに少しアレンジを加える
3.キャラクターを一部変える
4.原作の設定やキャラだけ使い、オリジナルのストーリーにする
原作に忠実に書く
このパターンは主に、アニメやドラマなどに多いと言えるでしょう。
長期連載の漫画などは、忠実に原作をなぞることが多くなっています。
代表的な作品としては、ジョジョの奇妙な冒険、逆境無頼カイジ、デスノートなどがあげられます。
中には時間の制限の都合上、いくつかのエピソードを削っていく場合もあります。
うしおととらなどは、結構、細かくエピソードやセリフなどを削っています。
原作に忠実に書く場合は時間の配分を考えるのが中心となっていくでしょう。
それでも、映像化ならではのセリフにするなどの工夫も必要になりますので、単純に原作をなぞればいいというわけではありません。
中には原作の流れを使って、見せ方の順番である構成を変えることもあります。
ジョジョの奇妙な冒険の第5部の1話は、アニメではストーリーの構成を変えているので、ぜひ参考までに見てみてください。
原作のストーリーに少しアレンジを加える
これは漫画の連載にアニメが追い付いてしまったときに使われます。
あまりいい例ではありませんが、ドラゴンボールZでの、戦闘中に不意に亀仙人とブルマの会話シーンが入る箇所です。
いい例としては、実写のデスノートのラストシーンが漫画とは違う結末にするといった箇所です。
ドラゴンボールのほうは明らかに尺伸ばしの感が強いですが、実写デスノートのほうは違う結末にしたことで原作を読んだ人でも楽しめる形となっています。
この差は、アレンジした箇所がストーリーと関係するかどうかになります。
ドラゴンボールの場合は、別にそのシーンがカットされても何も支障がありません。
つまりそのシーンは物語が止まり、動いてないことになります。
そうなれば、視聴者は先が見たいのに止められたことで、不快に思い、引き延ばしされていると感じてしまうのです。
キャラクターを一部変える
この脚色の方法は実写化する際に多く使われます。
例をあげると映画「チームバチスタの栄光」です。
小説では主人公の田口は男ですが、映画では女(竹内結子さん)になっています。
また、ドラマの「ガリレオ」では、湯川教授の相棒は内海(女)ですが、小説では草薙(男)が相棒の立ち位置です。
これは映像として見せるときに、華を出すために男を女に変更している形です。
もちろん、キャラクターの性別を変えるのですから、掛け合い、つまりはセリフの内容もおのずと変わっていきます。
また、恋愛要素なども加わってくる場合もあります。
そうなった場合はストーリーラインは原作の流れだとしても、セリフや行動に関しては脚色していかないといけません。
ここがライターの見せどころとなっていきます。
原作の設定やキャラだけ使い、オリジナルのストーリーにする
これは長期連載の漫画のアニメが、原作に追いつきそうになった際にオリジナルストーリーを入れる際に使われます。
または、サザエさんやちびまる子ちゃん、名探偵コナンなどは逆にオリジナルストーリーのほうが多いです。
この場合の脚色はとにかく、世界観とキャラを壊さないように細心の注意を払いましょう。
ストーリー自体は原作者ではなく、ライターが作るのでキャラの性格や世界観の設定が壊れる可能性が大きいです。
視聴者は原作が好きで見ている場合が多いため、キャラの性格や世界観設定に関しては敏感です。
大きく違っていると、苦情に繋がってしまいます。
この場合の仕事を受けた際は原作を必ず熟読しておきましょう。
さらっと読んだだけでは、コアなファンに必ず見破られてしまいます。
かといって、原作にあるストーリーの焼き増しでも見破られてしまいます。
オリジナルの要素が大きい分、苦労も大きいです。
また、実写化の映画の場合も、このパターンが多いです。
例としては実写映画の「進撃の巨人」、ハリウッド映画の「ドラゴンボール」ですね。
進撃の巨人は設定と一部のキャラクターを原作から借りて、それ以外はオリジナルとなっています。
そして、ハリウッド映画の「ドラゴンボール」に関しては、キャラクターの名前だけを借りて、それ以外はオリジナルになります。
たいてい、この場合は不評が多くなります。
ドラゴンボールに関しては酷過ぎて、脚本家が謝罪するくらいです。
これは面白さが原作を上回らないと、視聴者は納得しません。
ですが、原作のファンは原作が最高だと思っているので、これを上回るのは至難の業になります。
実写化で成功しているのは、忠実に再現するか、少しだけアレンジする程度のほうが確立が高いのではないでしょうか。
ただ、実写化する際にオリジナルで作るという心意気は尊敬します。
批判を受ける覚悟で、神経をすり減らしながら執筆してることでしょう。
脚色と一言でいっても、様々な要素が絡み合います。
原作の要素を生かしつつ、ライターである自分の色を入れていく。
これが優れた脚色ではないでしょうか。
それでは今回はここまでにいたします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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