脚本の3大要素の一つであるト書き。
以前、ト書きについての記事を書きましたが、今回はもう少し詳細に解説していきます。
以前書いたト書きについての記事になります。
よかったら合わせて読んでみてください。
シナリオのト書きの書き方コツ
ト書きとは
まずはおさらいの意味を込めて、ト書きとは何かを解説します。
ト書きとは「と隆志が握手を求めながら言う」などの動作を指示する文章になります。
頭に「と」が入るところから「ト書き」と呼ばれるようになりました。
似たもののとして小説やゲームシナリオの「地の文」があります。
物語の状況や時間、場所などの説明をする文章と考えるとよいでしょう。
ですが、この3つ全く違うものになります。
大きく違う点としては「ト書き」は視聴者が見るものではなく、「製作者」に対して書くものです。
小説は「読者」が目にする文章になります。
つまり、地の文は作品のそのものの箇所になり、ト書きは作品を作るための部品の役目を果たす箇所です。
地の文は読者を「楽しませる」ことが重要ですが、ト書きは製作者に「伝える」ことが重要になってきます。
例えば小説の地の文では下記のような書き方をする場合があります。
「何もかもが凍てつく世界。そんな中、天から輝くものが降ってくる。それはまるで天使の鱗粉のようだった。」
下手な例ですいません。
上記の例は「雪が降ってきた」ことを示す文章です。
あえて、そのまま雪が降ってきたと書かずに詩的な描写をしても読者が何を言っているのかを感じられるような洒落っ気を狙った文章です。
はっきり書かなくても伝える技術などがあります。
(もちろん、はっきり書く場合もあります)
ですが、ト書きで上のような文章を書いてはいけません。
「雪が降ってくる。」と、必ずそのまま書くようにしましょう。
しかもより簡潔に書くことを念頭に置いてください。
もし、上のような書き方をして、制作者が「雪を降らせる」ことだとわからなかったら本末転倒なのです。
下手をすると本当に鱗粉のような粉を降らせてしまう場合だってあり得ます。
ト書きはあくまで「作成者に状況を説明する」文章です。
「伝える」ことが最重要になりますので、わかりやすい文章で書いていきましょう。
どこまでを書くか
前回は物語に関係ある箇所を書けばよいと書きましたが、今回はもう少し突っ込んだことを解説します。
状況描写
まずは状況描写について解説します。
基本的な「場所」は柱に書きます。
ト書きではさらに「どんな場所」を「補足がある場合」は書いていきます。
たとえば喫茶店がそのシーンの場所だとしましょう。
喫茶店と言っても、混んでいるのか空いているのか、新しいのか古いのかなど色々と考えられます。
ではト書きでは毎回、どんな場所なのかを書く必要があるのかと言えば、そんなことはありません。
その場所が「特殊」な場合のみ、補足という形で書くと考えればいいでしょう。
映画「涼宮ハルヒの消失」という作品に以下のような1シーンがあります。
![](https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/18ffebc6.5557a818.18ffebc7.f9dc173e/?me_id=1360309&item_id=10062812&m=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fyouing-gaba-02%2Fcabinet%2Ft33%2Fvt049378.jpg%3F_ex%3D80x80&pc=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fyouing-gaba-02%2Fcabinet%2Ft33%2Fvt049378.jpg%3F_ex%3D240x240&s=240x240&t=pict)
ようやくキョンがハルヒを見つけて、喫茶店で事情を話すというシーンです。
このシーンでは事情を話せればいいので、とくに「どんな喫茶店」であるかは物語上関係ありません。
混んでいても、お客さんが一人もいなくても、オシャレでも古くてもどこでも話が成り立ちます。
そのような場合は「特殊」な場所ではないので、ト書きで補足する必要はないわけです。
逆に文芸部の教室に関してのシーンを見てみましょう。
この場所は「特殊」な場所になります。
というのも「SOS団創設前」の教室に「戻っている」というのがキーポイントになります。
しかも、「パソコン」が物語の進行上必要なアイテムになってきます。
こういうシーンでは「必ず」ト書きに書く必要があります。
簡素な部屋。パソコンだけが置いてある机とパイプ椅子が2つ。
パソコンが置いてあること以外は、SOS団の創設前の状態。
という形で書くといいでしょう。
姿描写
次に姿の描写です。
これも基本的には物語に関係がある場合に補足で書く必要があります。
物語に関係していない、特殊ではない場合はその場所での一般的な服装を用意してくれます。
街中では私服、学校では学生服、警察官の場合は制服、会社の中ではスーツなどといった感じです。
ここから外れた、その場所では変わった服装の場合はト書きで書く必要になります。
同じく映画「涼宮ハルヒの消失」からです。
スタート時、キョンやハルヒたちは「県立北高校」の生徒なので、北高の制服を着ているのが一般的です。
なので、全ての登場人物に北高の制服を着ていると書かなくてもよいです。
物語が進み、光陽園学園の生徒が出てきます。
この場合は柱で「光陽園学園」と書けば、その生徒は光陽園学園の制服を着ているのが一般的なので、そこも指定しなくてもよいです。
ただ、「強調したい」場合は書くようにしましょう。
光陽園学園の制服の〇〇がキョンの前を通る。
などという形です。
ここは必ず書かなくてはならないというわけではありませんが、書いておくとよいでしょう。
また、物語上、制服ではなく運動服に着替えるというシーンがあります。
その場合も
半袖短パンの運動服の小泉。
というような形で書く必要があります。
ト書きは補足です。
「特殊な場合」のみ書くという意識でよいでしょう。
動作描写
そして登場人物の動作についての描写です。
基本的には人物などの「出入り」を書く必要があります。
「誰」が「どのタイミング」で「入ってきた」のか「出ていった」のかを書きます。
その場にいなかったはずの人物が急に話し出したり、行動を起こすと製作者は困惑します。
一体、この人物はどこのタイミングで入ってきたのかがわからないと、作りようがありません。
また、「誰」が抜けるのも混乱の元になります。
たとえば、下記のようなパターンです。
ドアから入ってきて、鍵を閉めて、一息つく。
この文章だけを見ると、一体誰のことかがわかりません。
ただ、次のセリフで
太郎「ふう、疲れたぜ」
とあれば、ああ、太郎なんだろうなと推測がつきます。
小説の地の文であれば、こういう書き方でもよいですが、シナリオの場合は必ず「誰が」を書きましょう。
なので、「太郎がドアから入ってきて、鍵を閉めて、一息つく。」と書くことになります。
基本的に「わかるだろう」ではいけません。
ちゃんと丁寧に、端的にト書きを書くようにしましょう。
また、映画やドラマなどでは常に登場人物が動作していることが多いです。
ですが、その動作全てをト書きで指示する必要はありません。
ほとんどは役者のアドリブ、もしくは登場人物になりきることで自然と出てくる動作になります。
太郎が考える。
というシーンがあったとします。
それが腕を組んで考えるのでも、顎に手をやって考えるのでも、ウロウロと歩きまわるのでも、物語上では関係ありません。
ここは役者にお任せするという意味でも「考える」という動作の指示を書くだけでよいです。
例外として、その登場人物の「人間性」を出す必要がある場合はト書きに書かなくてはいけません。
考えるにしても、髭を触りながら考えるのが「癖」という人物であれば、役者には必ず髭を触りながら考えてもうらう動作をしてもらわなければいけません。
太郎が髭を触りながら考える。
というように書きましょう。
またアクションシーンや戦いのシーンに関してですが、ここはシナリオライターよりも演出家の領域になります。
カーチェイスやバトルのシーンなどは、ここにそういうシーンが入るとだけ書いておきましょう。
太郎と次郎が向かい合う。
戦闘。
このような感じで書くとよいでしょう。
太郎が右のパンチを繰り出し、次郎がそれを避けて左のハイキックを繰り出す。
などと詳細に書かなくてもよいのです。
もし、二人が互角の勝負というのが物語上必須であれば、「互角の勝負」と書いておきます。
餅は餅屋です。
演出に関しては演出家に任せましょう。
以上がト書きについて、どこまでを書けばいいかの解説になります。
いかがだったでしょうか。
少しでもあなたの参考になっていただければ幸いです。
それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。