起承転結の「起」と「承」の解説をしてきました。
今回は「転」の描き方を解説していこうと思います。
結論を先に書いておくと、転は「予想な方法で解決させる」です。
それでは詳細を解説していきましょう。
「起」と「承」に関して、まだ下記を読んでいない場合は読んでから本記事を読むことをお勧めします。
〈起で何を書くのかを解説〉
〈承で何を書くべきかを解説〉
転がなくても成立する
実は転に関してはなくても物語は成立します。
というより、転に関しては「読者次第」となってしまいます。
というのは、「予想外の方法」の部分が、読者にとってそれぞれ「予想外」かどうかが違ってくるからです。
なので、作者自身は渾身の「転」を描いたつもりでも、読者の中では「予想内」の方法になっている場合があるのです。
また、いわゆる「日常系」のものに関しては「転」をそもそも意図して入れてないという作品もあります。
例をあげると「よつばと」なんかはその代表例ですね。
よつばとの凄いところはストーリの流れに関連性がない中で、本当にキャラクターの魅力で勝負している作品になります。
よつばが奇想天外なことをするという部分で読者を楽しませています。
ライトノベルのようなキャラクター小説を書く方でも、参考になるかと思います。
話が逸れましたので、戻します。
このように、「転」がなくても話自体は成立します。
ですが、「転」がなくても、作らなくてもいいのかというとそうではありません。
「転」次第で読者に印象が残るかかが決まります。
見事に「転」がハマれば、読者は驚嘆し、頭の中にずっと残り続けます。
ストーリー自体が思い出せなくても、「このシーンが印象に残っている」場合が多いのは、「転」が上手くいっているシーンも多いのではないでしょうか。
「転」が上手い作品は、読んでいて「やられた!」となり、一気にその作品のファンになったりもします。
もちろん、作品のファンになる、一番の要因は「キャラクター」ですが、「転」も十分、ファンを獲得するための要素になってきます。
なので、全ての読者にとって「転」にならないかもしれませんが、それでも、全員に「転」と感じてもらえるように気合を入れて作っていきましょう。
転の作り方
では、実際に、どうやって転を作っていけばいいのかを解説していきましょう。
まず、転を作る際に意識して欲しいのは、「読者に○○だと思わせる」ことです。
例えば、解決方法はAしかないと思わせておいて、Bを出すという形です。
わかりやすい例を出しましょう。
※ここからHUNTER×HUNTERのネタバレがあるので、ご注意ください。
漫画「HUNTER×HUNTER」の中で、ハンター試験というものがあります。
その試験の中で、このようなシーンがあります。
5人一組で迷路を進んで行くという試験でのことです。
その試験には時間制限があり、残り1時間というタイミングで下記の2つの条件が提示されます。
2つの扉があり、1つは5人で進めるが、ゴールまでの道のりは険しくどんなに急いでも3時間はかかる。
もう一つは3人しか通れないがゴールまで10分で行けるというものです。
さあ、あなたなら、どうするでしょうか?
こう提示されると、無意識に読者の中では「どちらか」と考えるはずでしょう。
ですが、主人公のゴンが出した答えは全く違うものでした。
それは5人で進める道を選び、50分以内に壁を破壊して3人しか通れない道に出る、でした。
どうでしょうか。
これを答えを見ずに、この方法を思いついた読者は極々僅かだったのではないでしょうか。
これは先に「2択」を提示することで、「読者に2択しかないと思い込ませて」います。
そして、その2択のどちらでもない「予想外」の方法を提示することで、「転」としてます。
これは非常に上手い方法ですね。
このように、読者に「○○」とどう思わせるかが勝負になってきます。
転を作る際は、解決方法とは「全く違う方向の提示を読者に植え付ける」ことを考えてみてください。
伏線がなければ逆効果
転は「予想外の方法で解決させる」と書きましたが、いくら「予想外」でも、伏線がなければ逆効果になります。
逆効果どころか、読者は激怒することになります。
例を出して考えてみます。
密室で人が死んでいたとします。
主人公はその事件を一生懸命調べます。
トリックがあるのだろうと、色々検証しますがその方法はわかりません。
では、犯人はどうやって密室でその人を亡き者にしたのか。
それは……「魔法を使って密室内に入り込み、魔法を使って密室から出ました」ということだったのです。
……どうでしょうか?
納得できるでしょうか?
ほとんどの方はできないと思います。
激怒すると思います。
懸命に考えていればいるほど、その怒りの強さは増すと思います。
ですが、最初にこの世界は魔法があり、魔法を使って空間転移ができると伏線を張っていれば、なんとか納得できるのではないでしょうか。
これはいわゆる「夢オチ」でも言えることです。
主人公が絶体絶命で、どうやってもそのピンチを切り抜けられない状況だとします。
読者はこんな状況で、どうやって主人公はピンチを切り抜けるのだろうと期待して読み進めます。
それが「実は全部夢でした。だから主人公は目が覚めてめでたしめでたしです」。
……どうでしょうか?
これも確かに「予想外」ではありますが、納得できないと思います。
落ち着いて考えると、こんな方法は取らないよと思うでしょうか?
ですが、中級者ほどよくやってしまいがちです。
それは「転」で読者を驚かせてやろうという思いが強すぎて、予想外のことが「突飛」になってしまうのです。
作者は「さすがにこのオチは読めないだろう」と自信満々で書くのですが、読者からしたら「ふざけるな」という内容になる場合があります。
こうならないためにも、「読者の思考を想定」して「転」を作っていくのがいいでしょう。
読者に○○だと思わせておいて、実は●●でした、と見せるのです。
そのときに、自分が読者なら、それがちゃんと納得できるのか、ちゃんと伏線が張られているのかも確認してみるとよいでしょう。
最後に「転」が上手いと思う作品を紹介しておきます。
■HUNTER×HUNTER
上でも少し例を出しましたが、そのシーン以外にも上手い「転」が数多くあります。
また、HUNTER×HUNTERは、キャラが魅力的です。
HUNTER×HUNTERのキャラクターは全員が「そのキャラの最善の行動」をとっています。
キャラの動かし方の勉強にもなりますので、読んでいない場合は是非、読んでみてください。
※ただ、ずっと休載していることで有名な作品なので、ハマり過ぎると続きが気になるという落とし穴に落ちることになるのでご注意ください。
■シックス・センス
当時は物凄い話題になった映画です。
ブルースウィルス主演のハリウッド映画です。
この作品は本当に「転」が秀逸です。
全てが「転」のために作られていると言っても過言ではないでしょう。
オチを知らない方は、是非、オチを知る前に見てみてください。
■ファイト・クラブ
こちらも当時話題になった、映画です。
ブラットピット主演で、独特な雰囲気の映画になってます。
この作品は割とバイオレットな描写もあり、中には苦手な方もいるかもしれません。
ただ、「転」に関しては秀逸なので、勉強のつもりで見てみるのもよいでしょう。
いかがだったでしょうか。
「転」に関してはストーリー上、必須ではありませんが、上手くハマれば作品の強みにもなります。
最後に少しだけ脱線するのですが、これは小説の学校でもシナリオの学校でも言われたことですが、作るジャンルだけではなく、幅広いジャンルの作品を見て勉強する方がいいです。
例えば、ラノベ作家になりたいからといってラノベばかり読むのではなく、漫画や映画も見るべきです。
違う分野の作品からも学ぶことは多いです。
「転」は本当に難しい部分でもあるので、色々な作品を見て勉強するといいでしょう。
それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コメント