いいストーリーとはどういうものがあるでしょうか。
その中の一つに、感情移入できるストーリーというものがあります。
今回は感情移入できるストーリーの作り方について解説していきます。
感情移入できるキャラクター
まず最初に、視聴者は何に感情移入するかというと、それはキャラクターになります。
決してストーリーラインに対して感情移入することはありません。
これは当然だろうと思うでしょうか。
ですが、意外とここは罠に陥るところです。
たとえば、童話の「シンデレラ」を見てみましょう。
シンデレラは継母にいじめれて過ごしています。
そんな中、お城で舞踏会があるのですが、シンデレラは留守番を言い渡されます。
ですが、魔法使いによってドレスを用意し貰い、カボチャの馬車に乗り城へと行きます。
王子がシンデレラに一目惚れし、時間が来たシンデレラはガラスの靴を落とします。
そのガラスの靴を辿って、王子がやってきてシンデレラを見つけ出すことができます。
王子とシンデレラは結ばれ、めでたしめでたしという結末を迎えます。
いかがでしょう?
感情移入できるでしょうか?
想像力豊かなあなたなら、もしかしたら感情移入できたかもしれません。
ですが、大勢の人はこのあらすじを見て、感情移入できません。
なぜなら上の例はストーリーラインだからです。
可愛そうなシンデレラが幸せになったという話だけでは、人の感情は動きません。
ただし、ストーリーラインが悪いと言っているわけではありません。
現に、ディズニー映画やハリウッド映画でもシンデレラという作品が作られ、多くの人を感情移入させています。
では、何が違うかというと「キャラクター」です。
ストーリーではなく、キャラクターに人は感情移入するのです。
上の例で言うと「シンデレラ」に視聴者を感情移入させなければなりません。
シンデレラに感情移入した視聴者が、シンデレラが困難に打ち勝ち、幸せを勝ち取った時、一緒に嬉しい気持ちになるのです。
ですので、まずは「誰に」感情移入させるのかを決める必要があります。
共通性を持たせる
感情移入させるには、その視聴者との共通性を持たせることが必要になります。
これはスポーツが分かりやすい例になります。
オリンピックやワールドカップを見てみましょう。
ほとんどの人は、日本を応援するでしょう。
それはなぜかというと「同じ日本人」という「共通点」があるからです。
甲子園でも、ついつい自分の出身の都道府県の高校を応援してしまうのではないでしょうか。
これも「共通点」になります。
そして、応援しているチームが勝つと、やはり自分も嬉しくなります。
別に応援しているチームが勝っても自分にとって何のメリットもないはずです。
それでも、やっぱり嬉しくなってしまうのです。
これが感情移入です。
これをストーリーでも活かしていきます。
ですが、単に「キャラクター」を「日本人」にしたり「同じ都道府県の出身」にしたりすればいいかというと違います。
当然ですよね。
他のキャラクターもみんな同じになるはずで、これでは「どのキャラクター」に感情移入すればいいのかわかりません。
感情移入させたいキャラクターに対して、さらに視聴者との「共通点」を作っていかなければなりません。
ペルソナが大事
感情移入させるためには視聴者とキャラクターの「共通点」が必要というのを上で書きました。
その共通点を持たせるためには、「視聴者」を「特定」する必要があります。
そうじゃないと、どういう「共通点」があるのかがわかりません。
男性なのか女性なのか、学生なのか社会人なのか、明るい性格なのか暗い性格なのかという視聴者の「ペルソナ」を設定する必要があります。
16歳の男で、友達があんまりいなく、勉強も中の下でスポーツは出来ないという視聴者をペルソナに設定できれば、それを感情移入させたいキャラクターに同じような「共通性」をもたせるのです。
一番いい例として、ライトノベルがあります。
ライトノベルは「中高生の男性」向けに特化したジャンルです。
ですので、ライトノベルの主人公のほとんどは男子高校生になっています。
男子高校生の読者が読むと、主人公との「共通性」が多いため、感情移入しやすいというわけです。
最近のデータでは、ライトノベルを読んでいる読者に20代、30代の割合も高いというものがあります。
同じ年ではないのに、おかしいじゃないかと思ったでしょうか?
たしかに年齢は主人公と違います。
ですが、「他の共通性」が多ければ、十分感情移入できるのです。
たとえば、あまり女性と話すのが得意ではない、友達が多くない、これといった特技もあまりないといった感じです。
年齢や立場が違ったとしても「性格」の部分で「共通性」があれば、読者は感情移入するのです。
なので、想定する読者を設定する際、細かければ細かいほど、そのキャラクターの「共通点」を多くできるのです。
ただし、もちろん欠点もあります。
設定する読者の設定を細かくすればするほど、ドンドンと当てはまる読者は少なくなっていきます。
それは「共通性」がある部分が少なくなっていくということです。
共通点が少なければ、読者は感情移入できなくなり「面白い」と感じなくなっていきます。
ライトノベルが「オタク層の作品」と言われてしまう所以になります。
それはライトノベルが「オタク」と呼ばれる人たちを読者に設定し、多くの共通点を持たせることで感情移入させるジャンルだからです。
なので、「オタク」ではないような人から見ると「共通点が少ない」と感じ、「面白くない」と思ってしまうのです。
ただ、これは悪いことでは決してないです。
というより、読者を楽しませるために多くの共通点を作っているという手法なのです。
変に、大衆向けだといって、ふんわりとしたキャラクターを作ったところで、誰も感情移入してくれません。
この作品は一体、誰に対して感情移入させるのかを決めてから、作品作りをしていきましょう。
そして、その想定した読者以外の人から「面白くない」と言われても気にしてはいけません。
なぜなら、その人はその作品のペルソナではないからですから、面白くないのは当然なのです。
逆に想定していないペルソナから「面白い」と言われてしまう方が問題になってしまいます。
つまり、それはペルソナからズレているということになるからです。
設定よりも性格で
上でも触れましたが、共通点を持たせるのは「内面」、つまり性格のほうが強いです。
「感情」移入なので、感情につながる性格に対して共通点が多い方がいいわけです。
ですので、キャラクター設定をする際には外面的なものだけではなく、内面的な部分も詳細に決めていくといいでしょう。
ただし、ここで一つ注意点があります。
それは「共通点」だけを意識しすぎると「普通」のキャラクターになってしまいます。
普通のキャラクターは魅力に欠けるという弱点があります。
また、普通の人のようなキャラクターは、普通の生活を送っていますし、反応も普通になります。
そこに合わせたストーリーは単に日記になってしまいます。
せっかく、共通点を多く持たせたとしても、日記になってしまうと読者は感情移入しても、感情が「動かなければ」意味がありません。
では、ライトノベルはどうなのかを見てみます。
ライトノベルの主人公はできるだけ「普通」にしています。
それは読者に感情移入させるために、共通点を多くさせるためです。
では、どうやって普通の日記にならないのかというと、魅力的な「ヒロイン」を出しているからです。
普通である主人公を引っ張るほどのインパクトのあるヒロインが、無理やり主人公を振り回していくのです。
「涼宮ハルヒの憂鬱」のキョンは、まさにそのいい例です。
普通である主人公に感情移入させ、ヒロインに振り回されるというのを主人公と共に読者も体験することで「面白さ」を感じるのです。
ただし、この手法は「小説」だからこと成り立つ手法です。
漫画やアニメ、ドラマなどでは厳しいです。
小説は内面を多く語れるジャンルに対し、漫画やドラマなどは見た目を重点におくジャンルだからです。
見た目を重視するジャンルの場合、共通性とは別に「ヒーロー性」が必要になってきます。
このあたりの細かいことは、また別の機会に書きたいと思います。
以上が、感情移入をさせるストーリーの作り方になります。
いかがだったでしょうか?
少しでもあなたの参考になっていただければ幸いです。
それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。