シナリオ・小説の書き方 ファーストシーンは何を書くべきか

シナリオライター編
あなたが小説を書くとき、冒頭のシーンはどんなシーンを持ってくるでしょうか? 中にはあまり考えずに適当に、時系列通りに書く方も多いです。 ですが、冒頭というのは本当に大事です。 本屋や電子書籍のサンプルを見るときのことを考えて見てください。 まずは表紙とタイトルを見ると思います。 その次は「冒頭」を読むのではないでしょうか? いきなり真ん中やラストから見る人はほとんどいないと思います。 冒頭を見て、引き込まれるか? それを見て「買おうかどうか」考えると思います。 これは新人賞の選考でも同様になります。 冒頭の10ページで落とすかどうかを決めます。 これは実際に選考をしている出版社の選考を担当する方の話なので確実でしょう。 では、そんな重要な冒頭には何を書けばいいのかを解説します。 最初に結論を書くと、「その物語がなんの物語なのかがわかるシーン」を書くべきです。 それでは詳細を解説していきましょう。

派手であればいいわけではない

まず、やってはいけない有名なパターンとしては「説明」を書くことです。 最近こそ、あまり見なくなりましたが、昔は本当にこのパターンは多かったです。 いきなり、「世界観」を「説明の文章」で書くパターンです。 例で言うと「スターウォーズ」の初めに流れる文章みたいなイメージです。 スターウォーズでは、さすがに読みやすい内容にしているのと「映画」なので読んでくれますが、「書こうかどうか迷ってる人」から見ると、読まずに閉じると思います。 また、ジャンプ漫画の連載一話目の最初のページは「世界観説明」をするという手法を取っていることが多いです。 ですが、これは「漫画」であることと、それでも極力「絵で見せる」配慮をしています。 さらに1ページ、多くても2ページ以内に納めています。 基本的に説明というのは頭に入って来ません。 教科書を読むのと同じです。 このパターンで失敗した漫画で有名なのが「サムライ8」ですね。 これは例え「大物漫画家」でさえも越えられない壁だったと証明になりました。 漫画でさえこうなのですから、小説なら言わずもがなです。 では、次にやりがちな間違いは「派手なシーン」を持ってくることです。 これはテレビのドラマでよくある手法です。 派手なシーンや謎を示すことで、視聴者に「チャンネルを変えさせない」ために生まれた手法になります。 逆に「映画」ではあまり見られない手法ですね。 それは映画では「チャンネルを変えられる心配がない」からです。 お金を払って「見ることが決まっている観客」に対して見せる物なので、「必要以上に」派手にする必要はないわけです。 なので、映画ではゆったりとした主人公の日常から始まるパターンが多かったりします。 ただ、この手法を「新人賞の応募作」や「1巻」でやってはいけません。 なぜなら、「新人賞の応募作」や「1巻」は「まだ選考を突破させるか」「買おうか」が「決まっていない人」に向けたものになります。 平凡な主人公の日常スタートは、余程工夫をしなければ「面白くなさそう」と判断される可能性が高いです。 逆にいうと「2巻以降」の場合は読者は「買おうと決めている」可能性が高いので、日常スタートもありになります。 少し話が逸れたので戻します。 順序が逆になってしまいましたが、やってはいけないのは「地味な日常シーン」も読者の興味がひいてしまう可能性があります。 なので、テレビの手法を使った、派手なシーンをとにかく前に持ってくる方が多いです。 別に「派手なシーンがダメ」というわけではありません。 そのシーンが「その物語がどんな物語かがわかる」シーンであるなら、全く問題ないです。 ただ、「派手にするためだけに用意したシーン」である場合は、上手い手とは言えないでしょう。 なぜなら、「シーンの繋がりが悪くなる」ことと「読者に誤解を与える」可能性があるからです。

冒頭は表紙のイメージで書く

実際、小説が書籍化する際、表紙はイラストレーターやデザイナーが作ります。 この表紙は読者に「手に取ってもらう」ために工夫を凝らします。 そして、その手に取ってもらった小説を「買ってもらうか」は「冒頭のシーン」を見て決めます。 なので、小説としての表紙は「冒頭シーン」になるわけです。 読者はこの冒頭シーンを読んで、「この小説はどんな話なのか」を判断します。 例えば、その小説は「ハーレムもの」が売りなのに、冒頭のシーンを派手にしようと思い、「バトルシーン」にしたとしましょう。 読者は「バトル物なのか」と思って購入していきます。 ですが、いざ、読んでみると「ハーレムもの」だとわかります。 こうなるとどうなるでしょうか? 読者は「期待外れ」という評価を下します。 最悪、レビューに☆1なんかを付けられてしまいます。 逆にハーレムものが好きな読者が、その本を手に取ったとします。 冒頭を読んで、「バトル物」だと判断します。 さて、この読者は「購入」するでしょうか? 「ハーレムもの」も「バトル物」も好きであれば買うでしょうが、ほとんどの人はそのまま本を閉じてしまうでしょう。 どうでしょうか? 冒頭を強くしようと考えて、単に派手なシーンを入れることがメリットなのかデメリットなのかが理解いただけたと思います。 では、どんなシーンを描けばいいのでしょうか。 そこで、冒頭は「小説の表紙」という考え方が役に立ちます。 あなたが書いたその小説の表紙を作ると思ったとき、どんな表紙にしますか? ハーレムものであれば、女の子を表紙に入れるはずですね。 モンスターは入れないですよね? なので、ハーレムものであれば、「女の子との会話シーン」を入れるべきです。 ここで注意なのですが、必ずしも「ヒロインを入れろ」というわけではありません。 あなたの持ち味が出ていればOKです。 例えば、化物語のようにギャグと会話劇が売りであれば、もちろんギャグと会話劇が発揮できるシーンにすべきです。 考えるべきは、読者に「この小説はどんな話なのか」がわかるシーンにすべきです。 バトル物であれば、もちろん、バトルを描くべきです。 そして、もう一点、考慮すべきなのは「重要なシーン」であることです。 事件のきっかけのシーンでもいいですし、主人公がピンチのシーンでもいいです。 時系列的に後の話であれば、冒頭を描いた後に回想という形で、「どうしてそうなったか」を描いていけばいいでしょう。 なにより、最初のシーンは読者の印象に残ります。 なので、その印象に残るシーンは重要なシーンにすべきです。 冒頭で秀逸な作品として「鋼の錬金術師」があります。 最初のシーンは主人公であるエドが「足を失っている」というシーンで、「持って行かれた」というキーワードを出した、衝撃的で派手なシーンです。 そして、主人公のエドの目的を示す「重要なシーン」になっています。 これは、衝撃的かつ、なぜ、あんなシーンになったのかという「謎」を絡めることで、読者を一気に引き込んでいます。 人間には「謎があると解きたい」という欲求があります。 それを利用しているのです。
ちなみになのですが、テレビのクイズ番組で「答えはCMの後」としているのも、問題に対しての「謎」を知りたいという欲求を利用して、チャンネルを変えさせない工夫になります。 このように冒頭のシーンというのは、ある意味「一番重要なシーン」です。 考えに考え抜いて書くようにしましょう。 初稿ではざっくりと書いておき、一旦、全部書き終えてから冒頭のシーンを調整するという方法もよいでしょう。 冒頭が大事だからといって、冒頭の部分でずっと悩み続け、本文が進まないと言うのでは本末転倒です。 いかがだったでしょうか? 小説の冒頭は表紙と同じくらい重要なシーンです。 冒頭で読者を引き込むような素敵なシーンを描きましょう。 それでは今回はこの辺で。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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