ゲームシナリオにおける監修のやり方と注意点はここ!

シナリオディレクター編

ゲームシナリオ、テキストに関しては、始めての場合、どのように監修していけばいいのかわからないでしょう。
今回は、そんなときはどうするのかを解説していきます。

クライアントとしての意識を持って監修する

ゲームシナリオだけではなく、仕事での場合は感想を言うだけでは監修になりません。
以前書いた記事では、あくまでも対等な立場での監修の話になります。
よかったら、以前の記事も合わせて読んでみてください。
プロが教える!シナリオの感想や監修の書き方のコツ

対等な場合は作品の完成度の責任は書いた本人が持ちます。
ですが、クライアントとして監修する場合の作品の完成度は、すべてあなたの責任になります。
ここはとても大きな違いになります。

対等な立場の場合は、指摘箇所を直すか直さないかの取捨選択は本人に任せますが、クライアントの立場の場合は「必ず」直してもらいます。
もし、ライターの狙いがあり、そのままのほうがいい場合は直してもらわなくてもよいのですが、必ず「自分が納得」した状態にしておいてください。
上司やユーザーから質問があった場合は、あなたが答えなくてはなりません。
あなたが描く完成図を目指して、監修していきましょう。

相手からすると、あなたはお金を払う側で絶対の立場です。
(中にはそうは思わないライターの方もいますが……)
なので、修正依頼をすれば、たとえ自分が納得していなくとも修正を行います。
たとえ、その修正によって話が「つまらなくなっても」です。
ですので、作品の完成度の責任はあなたが持つことになるというわけです。

あなたの修正によって、同じライターが書いた作品でもまるで違う完成度となります。
その責任をしっかり持った上で、監修を行いましょう。
例外はありますが、監修者であれば、作品の完成度をライターのせいにしてはいけません。
(例外に関しては後述いたします)

ライターに敬意を払う

ここは当然のことですが、初心者や長い監修者はつい忘れてしまうところなので注意しましょう。
ライターに依頼しているということは、あなたが何かしら「できない」状態なので頼んでいるはずです。
たとえば、「書いた経験がない」「ゲームに出せるクォリティに達しない」「数が多すぎて時間がない」などで書けないといった場合です。

もし、あなたに十分な経験もあり、ゲーム内で出せるクォリティに達していて、書く時間があり、かつあなたが書きたいと思うのであれば、上司に「書きたい」と言ってみましょう。
外注ライターに依頼するよりは「安く」できますし、社内で書くので融通も利き、素早く対応できるのでメリットは多いです。
ただし、あなたの書くスピードが遅く、書くものにこだわりがありすぎて修正するのが嫌で、じっくり自分の作品として書きたいと思っているのであれば、「書きたい」というのはお勧めできません。

あくまでも、ゲーム内でのライティングは「仕事」です。
あなたが書きたいものを書けるわけではありません。
もし、この感覚を持っていないと、悩むことになります。
世間でいう「趣味を仕事にしてはいけない」という部分です。

がっつりとリテイクが入りますし、自分が意図してないものでも書く必要があります。
苦手な分野も関係ありません。
そうした環境の中で、スピードとクォリティを求められ、ゲームに沿った対応をしていくことになります。

そのような辛い作業をライターはしてくれているのです。
クライアント側だと、金を払う側だからと言って、上から目線になってはいけません。
必ず、ライターには敬意を払って仕事に臨むようにしましょう。

なので、監修する側の場合、必ず一度は「ライターとして仕事を受けたことがある」人がするのがいいです。
ここが経験のない人がすると、ライター側の辛さがわからず、普通に無茶なことを言い出したりします。
これは会社にとっても、ライターにとってもいいことではありません。

もし、会社内で上から目線で、無茶な依頼をしている人を見かけたらすぐに上司に相談しましょう。
こういうのは会社の評判を落とします。
そうなると誰も依頼を引き受けてくれなくなります。
いざ、あなたが外注管理をすることになった際に、困ることになるので注意しておきましょう。

完成図をしっかり描く

事前に、つまり発注する前の段階で、しっかりと作品の完成図を頭に描いておきましょう。
ここでの完成図とはシナリオの状態ではなく、「どのような流れで」「どのような雰囲気」の作品かになります。

そして、その完成図を描いてから、ライターに発注し、その完成図のイメージをライターに伝えておきます。
監修者の中には、まったくのノープランで「来た作品に対して監修すればいい」と思っている人が稀にいます。
これは正直に言って、ライターを疲弊させるだけなので止めておきましょう。

絵に例えて話すとわかりやすいです。
たとえば、あなたが「どんな絵が欲しいか」を伝えずに画家に「とりあえず、このキャンパスに絵を描いてほしい」と頼んだとします。
すると画家は自宅にいる「猫」を描いてきたとします。
あなたは人物画がほしい場合は「人物を書いてほしい」とリテイクすることになります。
画家は言われた通り、今度は自宅の「子供」の絵を描いてきたとします。
しかし、あなたは「男女の絵」が欲しかった場合は、またリテイクをすることになります。

ちょっとこれは極端すぎる(何も考えてなさすぎる)ので、違う例もあげておきます。

たとえば、あなたが「男女が向かい合った絵を描いてほしい」と依頼したとします。
するとイラストレーターが男女が向かい合った「劇画タッチ」の絵を描いてきたとします。
あなたは「アニメ調の塗り」の絵が欲しかったとリテイクを出すことになります。
イラストレーターがアニメ調の塗りに治しますが、今度は背景が現代のものになっています。
あなたは「中世ヨーロッパの時代」のものが欲しかった場合は、また、背景を直してもらうことになります。
他にも構図をもっとこうしてほしいとか、もっとこういうシチュエーションで描いてほしいなど要望があったとします。
そのたびに相手は修正することになっていきます。

これではイラストレーターは疲れ果ててしまいますし、「最初から言え」ということになります。

シナリオもこれと一緒です。
必ず、どんな流れで、どんな雰囲気で、どんな話のシナリオが欲しいかを伝えた上で書いてもらってください。
最初はプロットで、文字を書くだけだからやり直しは簡単だろうと思ってはいけません。

ここが勘違いされることが多いのですが、文章だからと言って簡単に書けるものではありません。
そういう感覚を持つためにも、ライターとして依頼を受けたことがある人が監修者になる方がいいでしょう。

そして、ライターにお金を払っているのは「会社」です。
あなたではないということは、決して忘れてはいけないのです。

あなたの趣味を書かせてはいけない

これは初心者の方に多いのですが、監修は決して、あなたの趣味を完成させることではありません。
自分の好みで修正依頼をかけてはいけないのです。

では、どういう部分に注意すればいいのかを下記に書いていきます。

まず一番に念頭におかなければならないのは、すべては「ゲーム」のために書いてもらわなければなりません。
つまり、仕様や施策に合っているかが、最重要になってきます。
ここがズレていると、どんなに面白いシナリオでも、NGとせざるを得ません。

たとえば、キャラクタークエストでいえば「キャラクターが引き立っているか」という視点で見なければなりません。
とても面白いストーリーだとしても、そのキャラクターが活躍していなければダメです。

ですので感覚としては自分の好き嫌いより「どうやったらよりゲームを面白くできるか」という視点で見たほうがいいでしょう。

そして、重要なのが修正依頼を出すときに明確な理由を書くようにしましょう。
「なんとなく、こうしてほしい」とか「なんかあの作品っぽく」という修正依頼は返ってライターを混乱させるだけです。
(中にはそういう伝え方のほうがいいというライターもいますが……)

なので、「こういう理由で、こんな風に直してほしい」という書き方をするのがいいでしょう。
その際に、ライターが「実はこういう理由があって、こういう書き方をしている」という旨があれば、それを考慮した上で修正するか、残すかを決めましょう。
ライターは依頼先の人ですが、一緒に作品を作り上げる協力者です。
双方が協力し合って作品を完成させていく、という考えを持って進めましょう。

有名なライターの場合

上で書かせていただいた、例外についてを解説しておきます。
もし、依頼したライターが有名だった場合です。

これはどこまでを監修したらいいのかが難しいのではないでしょうか。
自分が監修したことにより、そのライターの雰囲気が壊れてしまうのではないか。
そもそも、自分が口を出してもいいのか、などの悩みが付いて回るでしょう。

有名なライターに依頼する場合は、そのファンを取り込むためです。
ですので、変にこちら側でいじってしまうことで、そのファン層の怒りを買うなんてこともあり得ます。

その場合は、どこまで監修するかを「最初に」上司に相談しておきましょう。

ゲームの仕様と合っているか、キャラクターの口調は合っているか、世界観が合っているかなどは最低限、監修しないといけません。
それ以外はライターにお任せでいいかという部分を、必ず上司と握っておきましょう。

もし、面白さも担保しろと言われた場合、上記の「ファンを怒らせることになるかもしれない」という可能性も話しておきましょう。
その上で上司が、それでもいいと判断するのであれば、通常通りの監修をしてください。
もし、それで相手の有名なライターが怒っても、ファンが怒って炎上しても、上司の責任になります。

ここで、自分の身を守るための注意点を書いておきます。
上司が「そう判断した」ことは「必ず」文章で残しておきましょう。
議事録ということでもいいですし、何かしら理由をつけて文章にします。
そして、それをメールでもいいので、上司に送っておきます。
つまり、証拠として残しておくのです。

中には、上司が「そんな話聞いてない。あいつが勝手にやった」なんてこともあり得ます。
そんな漫画みたな……と思うかもしれませんが、実際にあり得るのです。
そうならないためにも、自分の身は自分で守るようにしましょう。

面白さと完成度は違う

最後に一点だけ注意を書いて終わりたいと思います。

ここを勘違いする人が多いですが、作品に対しての「面白さ」と「完成度」は全く違うものになります。
監修者はあくまでも「完成度」を高めるために行うものです。
たしかに「もっと面白くできないか」という視点を持つことは大事です。

ですが、「何が面白いか」というのは「誰にもわからない」のです。
たしかに素人が書いたものと、プロが書いたものでは格段に面白さが違っていたりします。

世の中には多くのプロが、多くの作品を作り出しています。
その中で、どの作品が当たるかは出してみないとわかりません。

つまり、何が当たるかがわからないのです。
もし、完全にわかるのであれば、世の中に「打ち切り」や「大コケ」なんてものはないはずです。

たとえば同じ作品を見た人の中でも「面白い」と思う人もいれば「何が面白いかわからない」という場合があります。

極端に言ってしまうと「面白さ」は「好み」の領域になります。

なので、もし、上司に「面白さ」の担保もしろと言われた際は、「自分が感じる面白さになります」と伝えておきましょう。
また、ユーザー全てを満足させられるものを作るのは不可能とも言っておくのも必要です。

ストーリーに興味がないディレクターやプロデューサーは、意外とこういう部分はわからなかったりしますので、注意が必要です。

以上が、ゲームシナリオにおける監修の注意点になります。
いかがだったでしょうか。
何かしら、参考になっていただければ幸いです。

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それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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