以前、世界観の作り方を解説しましたが、今回はもう少し突っ込んだ解説をしていきたいと思います。
過去の世界観の作り方は下記の記事で解説していますので、そちらを読んでからの方が今回の記事に対して理解が深まるでしょう。
〈ファンタジー小説の書き方 世界観についてを解説〉
上の記事では大枠の作り方を解説しましたが、今回は実際に大枠を作った後の作品の中での動かし方と注意点について解説します。
オリジナル要素を入れる際の注意点
まず、そのままの現実世界や歴史ものを作る場合は気にしなくていいのですが、何かしらオリジナル要素を入れる場合は注意が必要です。
例えば、「涼宮ハルヒの憂鬱」のように「普通の高校」内に、未来人や宇宙人、組織の人間、神のような存在がいても、「周りの人間」に関しては、特に変わらないのでそのまま現代の高校生活を基盤として作っていけばいいでしょう。
逆に、「とある魔術の禁書目録」のように、超能力が普通に存在する世界観だと「周りの人間」に関して注意が必要になってきます。
例えば、超能力を使う人間がいることが普通なので、周りの人間も「超能力を使う事」自体に驚いたりはしません。
こんなの、当然だろと思うでしょうか。
そうなんです。
こうして俯瞰して見ると間違うことはないでしょう。
ですが、実際に書いていると、そういう部分が見えなくなってしまう場合があります。
例えば、「読者に超能力がある世界だと説明したい」と考えたとします。
それをどうやったら自然に読者に説明できるかを考えます。
ストレートに「この世界では超能力が発達していて…」などと書けば、完全に説明台詞です。
「伝える」という点では間違いではありませんが、作家としては工夫が欲しい所です。
そこで、ある技法を使うことを考えます。
それは「知らない人に説明する」という技法です。
物語上では「知らない人に説明する」ので違和感がなく、これを使って読者に説明するという手法です。
これを「超能力が当たり前に存在する世界」でやったとしたらどうでしょうか?
これはその辺の人に「コンビニというのは24時間いつも開いていて、全国にフランチャイズという形で同じ店がそこら中にある」と説明するようなものです。
どうでしょうか?
そんなことを言っても、その人は「知ってるよ、そんなこと」と言われてしまいます。
ですが、物語を描いているときはこんなことも考えから飛ぶことがあります。
「超能力というのは、みんなが持っているんですか?」などと、読者に説明したいことをさらに質問させてしまいます。
なので、オリジナル要素を入れる際に、「そのオリジナル要素を説明するとき」や「事件が起こったときの周りの人たちの反応」に注意が必要になってきます。
これを避けるためには、世界観を作った時に人々が「知っていること」と「知らないこと」をあらかじめリストアップしておくとよいでしょう。
一番やってはいけないことは、反応が人によって違うという点です。
同じモブの立場なのに、ある人は超能力を使う場面で普通に流しているのに、ある人は超能力に驚くなんてことをすると、世界観がそれだけで崩壊してしまいます。
絶対に、人々の反応は合わせるようにしてください。
説明しないと読者には伝わらない
当然ですが、世界観に関して説明しないと読者には伝わりません。
ですが、上で解説したようにその世界では当然であることはなかなか説明するきっかけがありません。
そこで、後で説明しようと、説明を先延ばしにしてしまうと、読者はよくわからない世界観の中で話を読み進めなければなりません。
そうなれば、感情移入できないですし、物語の中の登場人物は知っている感じで話しているので、読者だけが置いてけぼりをくらっている感じになります。
こうなるくらいなら、地の文で説明してしまうという手がありますが、一人称で書いてある場合はそれも難しいです。
そういう点で考えると「異世界転生」は実に世界観を説明しやすい設定ですね。
主人公はその世界について、「何も知らない」ですし、召喚した側も「何も知らない」ということを知っているので丁寧に説明するのが自然となります。
初めに世界観を全て説明しなくてもよいですが、基本的にどんな世界観で、なにが特徴的な世界観というのはすぐに説明しなければなりません。
あとやってしまう失敗としては、作者の頭の中でも「当然のこと」になっているため、「説明自体をしない」「説明を忘れる」ということです。
なので、なれないうちは「説明するべきリスト」も作っておき、描写したら消していくという方法もありですね。
人気の作品はこういう「世界観の説明」もとても上手いです。
そういう点にも注目して読んでみましょう。
普段は読み流している部分でも、改めて注目して読んでみると、高い技術力だと知り、驚くはずでしょう。
これが普通の読者として読むのと、作家として勉強しながら読む違いになります。
面白いと思ってハマった作品があれば、改めてそういう視点で読み直してみてください。
きっと、気付くことが多いです。
それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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