物語の中で、キャラクターの台詞というのはとても重要なものになります。
読者はキャラクターの台詞を読むことで、そのキャラクターの感情を読み取ります。
また、キャラクターの台詞に寄って物語を進めるという要素も持っています。
キャラクターの台詞については下記で解説していますので、読んでいない方は是非、読んでからこの記事を読んで貰った方がよいでしょう。
〈台詞の書き方を解説〉
上記の記事で書いたように、キャラクターの台詞とは様々な要素を持っています。
ですが、そのために「キャラクターに簡単に本心」を言わせていないでしょうか?
考えてみてください。
あなたは会ってすぐの人に、自分の本心を話したりしますか?
例え、友達だったとしても本心を言うのはためらいが出るはずです。
それはキャラクターも同じです。
キャラクターは一人の人間です。
そういう細かい点で、キャラクターの深みというものが出てきます。
では、キャラクターはどんなときに本心を言うのかを考えてみましょう。
親しいというのは前提条件
まずは、ある程度は本心を言える関係性が必要です。
人は知らない人に本心は言いません。
(知らない人だからこそ言えるというのはありますが、ここではその話は置いておきます)
ある程度は「話してもいい」という関係性を構築しておかなければなりません。
この関係性を築くのは、一緒にいた時間でもいいですし、吊り橋効果を使った、一緒にピンチを乗り切るでもよいです。
必ず本心を言ってもおかしくないという関係性を作ることをまずはやってください。
あとは、その場にいるキャラクター数も考慮しなければなりません。
二人きりのときと三人のときでは、本心を言うハードルは違ってきます。
その辺もしっかり考えて、シーンの構成をしましょう。
逼迫した状況が必要
関係性を築いたら、次は「逼迫した状況」を作り出しましょう。
もちろん、本心の内容にもよりますが、本心を語るには語れる仲だけでは足りません。
もう一つ、背中を押すことで感情が揺れ、本心を語るという流れが望ましいでしょう。
秘密にしておきたい本心を話すということは、話す相手に「弱みを見せてもいい」という感情になっていることを意識しましょう。
簡単に本心を言わないキャラが、本心を言うことに読者の感情も揺れ動きます。
例を出して考えましょう。
ONE PIECEを出させていただきます。
私がかなり上手いと思ったシーンがあります。
それはナミの「助けて…」と言ったシーンです。
それまでのナミは、ルフィたちと冒険しながらも、いつかは離脱すると心に決めています。
そして、自分の故郷のココヤシ村を救うため、「一人で戦い抜く」という決意をもって行動しています。
だからこそ、ルフィたちを巻き込まないように、あえて「裏切る」という行為を見せて、距離を置いたわけです。
ですが、そんなナミの決意を、アーロンは踏みにじります。
それを知ったココヤシ村の住人は、自分たちの死を顧みずにアーロンへ反旗を翻します。
自分ではもう、どうしようもない自体に追い込まれたナミ。
そこにルフィたちが現れます。
それでも、ナミはルフィに「関係ない、出て行って」と言います。
それでもルフィは出て行こうとしません。
そんなルフィに対して、ナミが初めて「助けて…」と本心を言います。
尾田栄一郎先生は、この「助けて…」という一台詞のために、ここまで伏線と感情の揺れを丁寧に描いてきました。
この「一台詞のため」だけに、です。
この本心を一言いうためだけにおぜん立てをしました。
だからこそ、読者の感情も揺さぶられ、泣いてしまうのです。
逆に言うと、ここまでの状況におかれないと人は本心をなかなか出せないものです。
ですが、その分、出した時のカタルシスが大きなものになるわけですね。
どうでしょうか?
あなたは、キャラクターに簡単に本心を言わせていないでしょうか?
もちろん、全部が全部、ここまでの仕掛けをしろとは言いません。
お腹減ったや眠たい、これが好き、アレは嫌い、みたいな単純な本心であれば、すぐに出してもいいでしょう。
ですが、ここぞという場面で、キャラクターが葛藤の末に本心を言うというシーンは、読者の心にずっと残り続けるものになっていくのです。
それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コメント