【キャラクターの作り方】敵役・悪役の作り方

シナリオライター編

ストーリーを作る際に、主人公やヒロインに力を入れて作り込むと思います。

ですが、それと同じくらい重要なキャラクターがいます。

それは敵役・悪役です。

せっかく、主人公やヒロインが魅力的に描けたとしても、敵役や悪役で失敗するとストーリーの盛り上がりは一気に冷めてしまいます。

逆に言うと敵役や悪役が上手くいくと、一気にストーリーは盛り上がり、読者の読後感がよくなります。

終わりよければすべてよしという言葉を聞いたことがあると思いますが、ラストバトルが盛り上がれば、読者は満足することが多いでしょう。

それでは、どんな敵役、悪役がいいのでしょうか?

今回は敵役、悪役の作り方について解説していきましょう。

対比して作る

敵役、悪役はただ単に魅力的に描けばいいというわけではありません。

敵役や悪役の役割というのは「主人公を引き立てる役」にならなければなりません。

読者が感情移入した主人公の前に、強大な壁として立ちはだかり、その敵を倒すことで読者もその強大な壁を一緒に乗り越えた気持ちになるのです。

では、どのようにして主人公を引き立てるかというと、「主人公と対比」させることです。

一番わかりやすいのが、正義と悪です。

主人公が正義感が強いのであれば、敵はそれと対比して「悪」の道を突き進むキャラクターにするべきです。

主人公が刑事であれば、敵は犯人です。

逆に主人公が犯人の場合、敵役は刑事です。

これは「コナン」に対しての「犯人」や「ルパン3世」に対しての「銭形警部」のような関係性です。

デスノートでいうと、「ライト」に対しての「L」ですね。

例えば、スポーツの場合、ポジションの対比という方法もあります。

ピッチャーに対してのバッターや、ストライカーに対してのキーパーなどです。

あだち充先生の「H2」も、主人公がピッチャーであり、最大のライバルは「バッター」です。

先生に対しての生徒や店員に対しての客、貧乏人に対しての金持ち、医者に対しての患者、現場に対しての社長なんていうのも面白いかもしれません。

このようになぜ、対比させるかというと、「わかりやすい」というのがあります。

反対の立場であれば、読者は説明しなくても「敵」と判断してくれます。

また、立場だけではなく、「性格」に関しても対比させることでも「主人公を引き立てる」ことができます。

例えば、仲間を大事にする性格に対して孤高な存在や、お人よしに対して非情、明るいに対して暗い、卑屈に対して自信過剰など、性格でも対比は作れます。

これもやはり、ラストバトルの際に同じような性格同士が戦っても、やはり「絵的」に栄えません。

正反対の性格同士が戦うことで、バトルも栄えてきます。

例えば、ジョジョの奇妙な冒険2部のジョセフジョースターとカーズは、ジョセフがその抜けの明るい性格に対して、カーズは非情で勝てばいいという暗い性格です。

ワンピースのルフィとクロコダイルでは、明るく仲間を信じて大切にするルフィ―に対して、計算高く非情で仲間を信じず切り捨てるクロコダイルが激突することで、ラストバトルを盛り上げていました。

敵役は何かしら主人公と対比させるということを念頭に置いて設定して見ましょう。

主人公より上であること

敵役は必ず「主人公よりも上」にしてください。

そんなことは言わなくてもわかっていると思ったでしょうか。

確かに、ラスボスなのに主人公より弱いというキャラクターを設定する人はいないかと思います。

それはそうです。

あっさりと主人公が勝ってしまったら、盛り上がるわけがありません。

では、なぜ、そんな当たり前のことをわざわざ書いたかというと、強さの「方向性」を注意してもらいたいからです。

どういうことかというと、主人公の「能力」の延長線上で「強く」なくてはなりません。

例えば、推理物の作品で、頭のいい主人公に対して「力が強い」敵ではいけないということです。

この場合、喧嘩すると「敵の方が強い」ですが、読者はそこを見たいわけではありません。

あくまで「主人公の能力」の「上」をいく存在にしなくてはなりません。

例えば、ジョジョの奇妙な冒険の3部で、承太郎のスタンドの能力は力が強いですが、もし、ボスのディオが空間を渡る「逃げる」能力に長ける場合はどうでしょうでしょうか。

描き方の工夫で盛り上げることは可能ですが、あのような熱い展開にはならなかったでしょう。

デスノートでも推理合戦をする中で、いきなりLが強引にライトを銃で撃ちだしたらどうでしょうか?

もしくは権力にものを言わせて、大した証拠もなく強引に逮捕してしまったらどうでしょうか?

もちろん、あんな展開にはならなかったでしょう。

つまり、主人公が自信のある能力の上を行くからこそ、読者は「どうやって勝つんだ?」とハラハラドキドキするわけで、違うベクトルの強さを持っていたところで、そもそも勝負の場所が違うので、読者は冷めてしまうわけです。

欲望を強くする

次に「動機」についての解説をします。

敵役や悪役を作る際に、そのキャラクターの「動機」はしっかり考えているでしょうか?

敵だから単純に「悪い奴や嫌な奴」にしたり、「とにかく悪いことをする」というな形にしていないでしょうか?

悪い奴や嫌な奴というのは、スポーツや恋愛ものでよくやってしまいます。

ライバル的な敵役を「犯罪者」にすることができないので、「とりあえず」嫌な奴にしようとするわけです。

もちろん、嫌な奴にすることで、読者はそんな敵を倒すことで読者はスッキリします。

ただ、そんな敵役は「小物感」が出てしまいます。

精々、途中で出てくる障害くらいの敵キャラに留めておくべきでしょう。

では、ボスキャラの場合はどうするべきでしょうか?

それは、「なぜ、そんな性格になったのか」という部分まで描くのです。

つまり、そのキャラクターが「何を犠牲にしてでも、やり遂げる」という強い「欲望」を設定するのです。

「自分の為なら、他の全てを犠牲にする」というある意味ストイックさを出すことで、「カリスマ性」を生み出すことができます。

「カリスマ性」というのは、普通の人ではできないことを平然とやることで、人は尊敬と畏怖を込めて見ることで、その人に陶酔するわけです。

これはジョジョの奇妙な冒険がとても分かりやすい例になるでしょう。

ジョジョの奇妙な冒険の1,2,3,4、5部のボスを見てみましょう。

1部と3部は「ディオ」ですが、ディオはかなり人気のあるボスキャラになります。

ディオの良い点は、1部で成り上がるための強い動機である「欲望」を描いていました。

ここでディオのバックボーンを見せた上で、3部では仲間に対して、肉の芽を植え付ける半面、仲間を非常に切り捨てるという行動は自分の欲望を満たすためには「他者をまったく顧みない」残虐性が描かれています。

この2点が揃っているので、あれだけのカリスマ性を生み出すことができました。

2部のカーズですが、こちらは「動機」の部分はそこまで描き切れませんでしたが、人間を下に見ており、勝利の為なら騙す事さえもいとわないという行動を取っています。

やはり、「動機」の部分が薄かったせいで、カリスマ性という部分は薄く、若干の小物臭が出てしまいました。

次に4部の吉良吉影です。

このキャラも人気ですが、「カリスマ性」があるかというとそこまでではないと思います。

それは、静かに暮らしたいという「動機」の部分はしっかりと描かれていました。

そこに共感する読者もいたため、人気となったのでしょう。

ですが、その「欲望」の部分が薄かったように感じます。

基本的には降りかかる火の粉を振り払うというスタンスで、ピンチになれば逃げるという部分で、欲望に対して突き進むという部分では弱かったのです。

しかも、最後の方では家族に対して少しの情をもったような描写をしてしまったことで、人間性としての魅力は出ましたが、ボスとしての強さという面に関しては弱くなってしまったと言えるでしょう。

最後に5部のディアボロです。

このディアボロに対してはあまり印象に残っていないという読者もいるのではないでしょうか。

どちらかというと、ジョルノのチートのような能力の方に目がいってしまい、完全にボスの方が忘れられてしまうような形になってしまっています。

これは、動機も欲望もどちらも強く描かれなかったからでしょう。

ディアボロの過去はほとんど描かれず、また、欲望に対しての強さも、自分のスタンド能力に頼った形で「突き進む」という勢いはありませんでした。

このように動機と欲望というのはとても大切です。

自分の欲望に対して、ある意味、主人公のように「真っ直ぐ」である方が突き進む勢いが出てきます。

小細工をしない

最後に小細工をしないという点に関して解説します。

この「小細工」の部分が、「小物」かどうかを決める箇所になります。

ボスといえば、やはり「慌てずに余裕で主人公を待ち受ける」という方が大物感が出ます。

ジョジョの奇妙な冒険のディオやワンピースのクロコダイルなどがそれにあたります。

主人公たちが向かっていたとしても、策は弄しつつも、自分から主人公たちの元へと行かず、待っているという「余裕」が逆に不気味さを生み出します。

アイシールド21のミスター・ドンがこのようなセリフを言っています。

「王者は軽々しく出ていくもんじゃあない…。蟻どもが這い上がってくんのを眺めるんだよ」

実に余裕のあるセリフですね。

そして、嫌な奴感を醸し出しています。

自らの力に対して絶対的な自信があるからこそ、主人公たちのことなど歯牙にもかけない、そんな強さをにじみ出すことで、読者も「圧倒的な強者」だと感じるわけです。

ボス自らが慌てて、主人公の元へ現れて目を摘もうとすると、やはり「小物感」が出てしまう結果になってしまいます。

これはスポーツものや恋愛ものでも言えます。

勝つためとはいえ、「スポーツや恋愛の枠以外」のことで策を弄してしまうと、小物になってしまいます。

例えば、スポーツで勝つために相手に怪我を負わせたり、弱みを握ったりすることです。

恋愛でも、主人公を陥れるような姑息な手を使うと、嫌な奴にはなりますが、小物になります。

やはり、策など労せずにどっしりと構えてこその、ボスといえるでしょう。

いかがだったでしょうか?

最後の戦いや勝負を盛り上げるために不可欠なボスキャラクター。

そのキャラクターをいかによいキャラクターに仕上げるかが、ラストが盛り上がるかのキーとなります。

しっかりと考え抜いて、よいキャラクターを作っていきましょう。

それでは最後まで読んでいただき、ありがとございました。

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