説明が長いと読者が逃げる、というのは作家であれば分かっていると思います。
自分が読者の立場だった場合、説明が多い作品を読むと「説明ばっかりだ」と読むのを止めてしまうでしょう。
ですが、いざ、作者の立場になると「説明しないと読者には伝わらない」と思い、ついつい、説明を多くしてしまう。
こんな経験はないでしょうか。
この場合は説明ではなく描写することで、読者の離脱を避けることができます。
では、説明と描写の違いとはなにか?
今回はそこを解説していきたいと思います。
説明は直接的で描写は間接的
説明と描写の違いは、ずばり直接的であるかと間接的であるかになります。
例を出します。
Aは照れている。
これが説明になります。
Aは顔を赤くしながら、頬を掻いた。
これが描写です。
いかがでしょうか。
違いがはっきりと分かったと思います。
描写の方は「直接は照れている」とは書かずに、動作や様子で「照れている」という「表現」をしています。
では、なぜ、説明より描写の方がよいかというと、読者が「想像しやすい」からです。
その状況を書くことで読者はよりその状況を想像することできます。
想像するということはストーリー内に入り込んでいることになります。
説明ではっきりと書くよりも、状況を書いて間接的に伝えることの方が想像しやすいというのは不思議ですね。
ですが、「照れてる」と書かれていても、人それぞれ、照れる反応は違います。
顔を逸らす人もいれば、顔を手で覆う人もいます。
そのキャラクターの性格もおのずと出てくるので、説明よりも描写の方がよいというわけです。
ただ、最初の頃は説明と描写の違いというのがつかめないかもしれません。
そんなときは「シナリオ」を読むことをお勧めします。
なぜなら、シナリオのト書きは「照れる」とは書かないからです。
シナリオは役者が演じるための台本ですから、照れると書かれていても、どう照れるかというのがわかりません。
なので、ト書きには「動作」が書かれています。
なので、描写の書き方の参考になるでしょう。
ただ、ト書きは伝わりやすくということに特化した書き方なので、やや情緒的なものが薄いのでそこは注意しましょう。
伝わらなければ意味がない
では、全てを「描写すればいい」かというと、それもまた違います。
どういうことかというと、描写は「動作や様子」を描くことで、間接的に読者に伝える表現です。
なので、「伝わらない場合」があるわけです。
例えば、照れると上唇を舐める癖があるキャラクターがいたとします。
それを最初から、彼女は上唇をぺろりと舐めた、と書いたとします。
これは十中八九、読者にそのキャラが「照れている」とは伝わりません。
どんな詩的で情緒的に描かれた「描写」だったとしても、読者に伝わらなければ意味がありません。
では、どうすればいいのかというと……「説明」すればいいのです。
何を言ってるんだ?と思ったでしょうか?
上では説明を止めろと書いていたのに、ここで説明で書けっていうのは矛盾してると思ったかもしれません。
ですが、そうではありません。
「長い」説明をすると読者が読むのを止めてしまうのです。
言いたいことはわかっていただけたでしょうか。
そうです。
長くなければ説明を使っていいわけです。
というより、より短い文字数で的確に説明できるのであれば、説明の方がいいのです。
身体に良いからといって、大量に納豆しか食べなければ、体を壊します。
つまり、何事にも「バランス」が必要ということです。
描写の方がいいと言って、全ての地の文を描写にしてしまうと、文章自体が長くなり過ぎてしまいます。
それはそれで、読者は飽きがきてしまいます。
最初に長々と説明から入るから読者が本を閉じてしまうのです。
説明と描写を使い、読みやすく、かつ短く表現すれば説明は読者の頭の中にスッと入っていきます。
面白い小説はこの説明と描写のバランスがとても上手いです。
こういう部分を意識しながら、再度面白いと思った小説を読み返してみましょう。
一見すると何気ない文章の中に、驚くような技術が詰まっているものです。
それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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