【ストーリーの作り方】障害と葛藤と乗り越え方の解説

シナリオライター編
物語には葛藤が入っていた方がいい、葛藤があるとキャラクターに深みが出る、葛藤によって読者がキャラクターに感情移入する、などなど、昔は、ストーリーを作る際に「葛藤」が必要でした。 ただ、今は「ライトノベル」が台頭してきて、気軽に読めるというコンセプトから、「葛藤がない」作品も随分と多くなってきました。 ですが、「葛藤」というのは物語を盛り上げますし、キャラクターにより感情移入させやすいというメリットがあります。 漫画では、この葛藤を使っている作品の方が多いです。 ライトノベルを書くからといって、「葛藤」を疎かにするのではなく、周りが使っていないからこそ、あなたが使えば、それだけで周りとは一歩抜き出ることができます。 今回の解説を読んで、是非、葛藤のさせ方を勉強して、使いこなしてみてください。 きっとあなたの小説は今までと違った作品になるでしょう。

まずは障害を作る

キャラクターを葛藤させるには、まずは障害を作る必要があります。 ただ、普段通り過ごしている中で、葛藤なんてしませんよね? そして、ピンチの時こそ人は成長すると言いますが、まさにそこで、ピンチという障害による葛藤を乗り越えることで、キャラクターは成長を遂げるというわけです。 この障害というのはそのキャラクターにとって、小さくても大きくてもいけません。 ギリギリ乗り越えられそうなラインの障害であれば、その分、盛り上がるというわけです。 ですが、この障害も今のラノベ、特に「なろう系の俺強ぇ系」ではほとんど見られません。 なんでもすぐに主人公の強さで乗り越えてしまうからです。 こうなってしまうと、ストーリーは平たんになってきてしまいます。 では、俺強ぇ系では障害を作れないかというと、それは違います。 俺強ぇ系でも十分、障害は作れます。 どうやって作るかというと、主人公は強いので「強さに関連しない障害」にするのです。 例えば、2人の女の子に、別々で同じ日の同じ時間にデートに誘われた、とかです。 これは強さとは違ったベクトルで、強さでは解決できない障害ですね。 明日までに1千万円用意しなければならい、これも強さとは関連しない障害ですね。 つまり、「そのキャラクターの得意ではない分野」で障害を作ればいいのです。 この障害の作り方としては、「転生したらスライムだった件」が参考になるでしょう。
主人公のリムルはチート的な能力を持っています。 そして、リムルはモンスターによる国を作ろうとしています。 国となると、当然、他の国との友好関係や駆け引きが必要になってきます。 何でもかんでも力でごり押ししていれば、他の国が結束して、国に攻めてきます。 いくらリムルが強くても国民自体を守りきれません。 ここは強さとは別の問題を解決していかなければなりません。 こういう障害の作り方が「転生したらスライムだった件」は上手いです。 漫画化、アニメ化されて人気になるのも頷けます。 全てを力でごり押しするだけでは、読者は展開に飽きてしまいます。 読者は「この障害をどうやって主人公が乗り越えていくんだろう」と不安とワクワクの感情をもって読み進めていくのです。

障害と葛藤は別

うまく障害が作れたといって、それがそのまま葛藤になるわけではありません。 葛藤というのは、心が右に左に揺れ動くことをいいます。 つまり、「どちらにした方がいいのかわからない状態で悩んで」こそ、葛藤になります。 例えば、RPGで「魔王を倒さないとならない」というのは障害ではありますが、葛藤ではありませんね。 「魔王を倒すためには伝説の剣が必要だが、どこにあるかわからない」 これは葛藤になるでしょうか? なりませんね。 それはなぜかというと、「解決方法がわかっているから」です。 剣がどこにあるかわからないなら、「探せばいい」だけです。 世界中を回るのか、人々の話を聞いて情報を集めるのか、とにかく行動すればいいという状態では葛藤とは呼べません。 では、どういうものが葛藤かというと、いい例があります。 HUNTER×HUNTERで、あるクイズが出されます。
「悪党に自分の娘と息子が攫われた。助けられるのはどちらか一人だけ。どちらを助ける?」 どうでしょうか? 答えはすぐに決まらないですよね。すぐに行動には移せませんよね? 悩むはずです。 その悩みこそが「葛藤」になるわけです。 どちらを選んでも必ず不利益がある、というのが葛藤になりえるわけです。 どちらを選んでも、同じ不利益というのがよい葛藤と言えるでしょう。 このように「障害」だけではなく、そのキャラクターに「悩ませる」というのを念頭に置いて、葛藤を作り上げていきましょう。

葛藤の乗り越え方

誰しもが簡単には答えを出せない、そんないい葛藤を作り出した後は、それを乗り越えなくてはなりません。 つまり、何かしらの「答えを出す」必要があります。 この葛藤の乗り越え方が作家の腕の見せ所になります。 読者が納得する乗り越え方にしてください。 中途半端な乗り越え方をさせるくらいなら、まだ葛藤させない方がよいでしょう。 例えば、上のHUNTER×HUNTERのクイズで考えてみましょう。 「悪党に自分の娘と息子が攫われた。助けられるのはどちらか一人だけ。どちらを助ける?」 これに対して、「速攻で悪党を倒して二人とも助ける」という答えを出したとしたら、どうでしょうか? なんだそりゃ?とならないでしょうか。 そんな答えであれば、別に悩まないでしょう。 そして、悩まないなら、それは葛藤とは言えません。 ここで一点、注意があります。 葛藤の乗り越え方は必ずしも「一般的な正解(ほとんどの人が選ぶであろう選択)を選ばなくてもいい」です。 葛藤を乗り越えるというのは、「どちらかを選ぶ決心をする」ことです。 その決心により、成長することが葛藤を乗り越えるということです。 例えば、よくあるのが「世界をとるかヒロインをとるか」という葛藤があるとします。 ほとんどの人が「ヒロインをとる」と言いそうですね。 ですが、主人公は「世界をとって」もいいわけです。 悩みに悩んで、ヒロインよりも世界を守りたい、この世界を守りたいという決意をもって選ぶからこそ、主人公は成長を遂げるわけです。 この場合はヒロインを犠牲にしたわけですから、これからの主人公の人生は世界の平和の為に費やされるでしょう。 自分の心を殺してでも、世界を守り抜くという決心が主人公の成長というわけです。 「解決」させることが「乗り越えるわけではない」ということに注意しておきましょう。 ここでもHUNTER×HUNTERを例にしてみましょう。 ハンター試験の中で、制限時間が1時間切ったという状況で、2択を提示されます。 1つは5人で進めるがゴールに着くまで45時間がかかる、もう一つは3人しか進めないが3分でゴールに着く、というものです。 ここまで一緒に進んできた仲間だからこそ、誰一人欠けることなくゴールしたいと思っています。 この2択は「葛藤」になっています。 ですが、主人公のゴンはこのような「答え」を出します。 5人で進む道に入って、壁を壊し、3人で進む道に入る。 これは見事な「解決法」だと思います。 私も思わず「なるほど」と感心してしまいました。 上手い発想だな、と。 ですが、どうでしょうか? これは「葛藤を乗り越えた」と言えるでしょうか? 悩んで答えを出したわけではないですし、この答えによって誰かが「成長」したわけではありません。 ゴンが「解決法」を出した時点で、それは葛藤ではなく、ただの障害となったわけです。 HUNTER×HUNTERの場合は、この2択はあくまで「障害」として出していて、「葛藤」という形では描いていなかったので、別にHUNTER×HUNTERが悪いというわけでは、決してありません。 つまり、何が言いたいかというと、「葛藤」を描いたのであれば、誰かが傷つく形になったとしても、逃げずに「選ぶ」ことで、「乗り越えてほしい」というわけです。 このように葛藤というのは、作者さえも苦しめるものです。 なので、「ライトノベル」では使われることがなくなったのかもしれません。 ですが、そこを使いこなすことで、今までよりもさらに一歩踏み出した作品を作ってみてはいかがでしょうか。 それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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