新人賞に応募する際に、必ず「あらすじ」を付けて応募することになります。
小説の本編を書き終え、ホッと一息ついて、「さてと。パパっと、あらすじでも書くか」という感じで適当に書いていないでしょうか?
新人賞の応募は数百、多いと千以上の作品が届きます。
もちろん、一人が全部読むわけではなく、下読みと呼ばれる人たちが割り当てられて読むことになります。
一人10~20くらいでしょうか。
あなたが、丹精込めた小説なので、「もちろん下読みは全部読んで合否を決めるだろう」と思ってないでしょうか?
もちろん、ちゃんと読んで合否を決める下読みの人もいるでしょう。
ですが、あなたが下読みとして「読む側」となったとして考えてみましょう。
10~20の作品をしっかりと全部読むでしょうか?
その作品の全てが「面白い」のであれば、読むこともできるでしょう。
ですが、「応募作品の中で、まともに読める作品は1~2割程度」とのことです。
ということはまともに読める小説は2~4作品程度。
その他の8~16作品は読むのも辛い作品ばかりだったとします。
もう一度、聞きます。
しっかりと全部読みますか?
ほとんどの方は「全部は読まない」でしょう。
では、「どこで判断するか」になります。
そこで、目を通すのが「あらすじ」です。
「あらすじ」と「最初の10ページ」を読んで、下読みの方は合否を決めるそうです。
どうでしょうか?
これでも「あらすじを適当に書いてもよい」と思いますか?
では、あらすじをどう書けばいいのかを解説していきましょう。
結果を先に書いておくと、あらすじは「わかりやすく」「面白いと思えるように」書くことを意識することです。
では、詳細を解説していきましょう。
簡潔にわかりやすく最後まで書く
あらすじは大前提として「わかりやすく」書くことが必要です。
小説の地の文のように「着飾った表現は避ける」べきです。
あらすじは大体「800文字」程度で書かなければなりません。
例えば「美しい」という言葉を書くのに「花のような可憐な」という表現を使うとそれだけで文字数を使ってしまいます。
表現はわかりやく、簡潔にです。
そして、もう一点、大前提としては「最後まで」書く必要があります。
応募規定にも書いてありますが、「完結の流れまで」書いてください、とあります。
それを読まずに、よくある「広告の煽り文」で送ってくる人もいるそうです。
例えば、「この後、主人公は思いもしない方法でピンチを切り抜けるのだった。その方法は本編でご覧ください」という終わり方です。
内容を見なくても、この一文があった時点で落とされてもおかしくありません。
なぜなら、「応募規定すら見ていない」人ということです。
考えてみてください。
新人賞で受賞してデビューする場合、出版社とは「契約して出版する」という「仕事の関係」になるわけです。
いいですか?
「仕事相手」になるわけです。
「規約さえも読まないで作品を送って来る人」と「仕事をしたい」と思いますか?
作家として書籍を出し、人気が出た際にはアニメ化やグッズ販売など、出版社以外の業者とも関わることになります。
そんな中で大事な書類に目を通さないで契約して、後から文句を言ってくるかもしれない作家をデビューさせたいと思うでしょうか。
以前の記事でも書きましたが、新人賞に応募するのは、作品という履歴書を持って出版社に入社試験を受けに行くようなものです。
規約はしっかりと読み、ちゃんと守って送りましょう。
なので、あらすじはしっかり「オチ」も書くようにしましょう。
本筋しか書かない
次にあらすじは本筋しか書かない方がいいということです。
800文字しか書けないのです。
余計なことは書けません。
なので、サブエピソードについては書くべきではありません。
例えば「涼宮ハルヒの消失」で考えてみましょう。
※下記はネタバレを含みますので、ご注意ください。
このストーリーを最初から最後までシーン順に書いていたら800文字に収まりません。
なので、「クラスに風邪が流行っている」とか「長門の家に行き、そこで朝倉が来る」とか「中学の頃のハルヒに会う」とか本軸に直接かかわらないところは書かない方がいいでしょう。
では、何を書くのかというのかというと
・クリスマスパーティが近づいてきたある日、教室にはハルヒの代わりに朝倉がいる
・世界が改変されていることにキョンが気づく
・文芸部には長門しかいなく、みくるもキョンのことを覚えていない
・文芸部の部室で長門からのヒントのメモを見つけ、パソコンにキーワードを打ち込み過去に戻る
・犯人は長門でハルヒの能力を使って世界を改変していた
・再修正プログラムを打ち込み、世界改変を止める
・現代に戻ってきて、無事にクリスマスパーティをやる
このくらいでしょうか。
改変された世界でハルヒを探し、ハルヒと一緒に学校に忍び込むことも書かなくてもよいわけです。
この辺の取捨選択に関しては、上のように箇条書きにして洗い出してみるといいでしょう。
あらすじでも面白く書く
あらすじは、本筋を簡潔に最後まで淡々と書けばいいのかというと、それだけでは足りません。
あなたは作家なのですから、「あらすじでも面白く書く」べきなのです。
面白くというより、下読みの方に「読んでみたい」と思わせる必要があります。
では、どうすればいいのかというと、書く項目は最小限にして、項目自体は文字数を使って表現するということです。
例えば、上の「涼宮ハルヒの消失」で考えてみましょう。
この作品の見て欲しい軸となるところは「犯人は長門だった」というところだと思います。
そして、「なぜ、長門がそんなことをしたのか」という理由の部分も見どころの一つでしょう。
「世界の改変をしたのは、なんと長門だった。いつも無表情で影でずっと助けていた長門に、キョンは思う。長門は疲れていたんだと。もし、自分が普通の人間であったなら、どうなったのだろうかと思ったのだろう。」
このように「他でカットしたシーン分」の文字を、ストーリーの核の箇所で厚めに描写するのです。
上を簡潔に書くだけなら「犯人は長門だった」という8文字で表現できます。
ですが、「この小説はここが見どころなんですよ」という部分をあらすじでもアピールしておくのです。
そうすれば、下読みの方は見どころを意識しながら本編を読んでくれるでしょう。
下読みの方は、あらすじが面白ければ、本編も面白いだろうと思います。
このように「あらすじ」は本編並みに大事だということを意識しましょう。
あらすじを書くには、まずは最小限の文字数で一旦、最後までの流れを書き、そこから見どころのシーンを面白く書けないかを考えてみましょう。
また、あらすじも、練習で上達していきます。
普段から、小説や映画であらすじを書く練習をしておくとよいでしょう。
涼宮ハルヒの消失はお勧めですので、良ければ、是非、見てみてください。
それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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