あなたは小説を書き終えた後、見直しや推敲をやっていますでしょうか。
新人賞の締め切りに追われ、ギリギリに書き終わり、そのまま投稿するなんてことは誰しも一度はある経験だと思います。
もちろん、私も何度も経験があります。
ですが、どうでしょうか?
そのまま見直しもせずに出した小説の結果は、悪い方が多くないでしょうか?
それも当然のことで、読む方は「見直してないな」とわかります。
以前、twitterの方でも書きましたが、新人賞というのは小説という履歴書をもって出版社に採用試験を受けに行くようなものです。
なので、見直していない小説というのは、雑に書いた履歴書ということになります。
そんな履歴書を持ってきた人を、会社は雇いたいと思うでしょうか。
確かに、雑な履歴書でも、輝かしい実績があれば採用となるでしょう。
(この場合はストーリーが凄い面白いという形になります)
ただ、どちらを採用しようか迷っている状態であれば、きっちりと書かれた履歴書を持ってきた人を採用するでしょう。
また、読んで貰う相手に対して、見直していない作品を出すというのはある意味失礼にあたります。
そのくらい推敲というのは大事な作業です。
前置きが長くなりましたが、推敲に関して解説していきたいと思います。
今回は「推敲するタイミング」と「推敲のやり方」の2点について解説します。
タイミングは次回作を書き終わった後
まずは推敲をするタイミングについてです。
大体の人は書き終わった後、すぐに見直しと推敲をすると思います。
これは例えば、依頼された際に納品が迫っている場合であれば、やむを得ないでしょう。
ですが、新人賞に応募するのであれば、書き終わった後、すぐに推敲するのはお勧めできません。
仮に、締め切りが迫っていてすぐに応募しなければならないという状況であれば、今回は諦め、次回に回すべきです。
自信作であるなら、尚更です。
プロの世界であれば、『初稿』段階の作品のクォリティの完成度は大体6割程度です。
これを推敲することで、10割に持っていくのです。
プロでさえ、このような感じです。
アマチュアであれば、尚更、「初稿の完成度」は低いでしょう。
では、どのタイミングで推敲するべきかというと、時間は置けば置くほどいいです。
何故かというと、置いた時間の分だけ、「他人の視点」で読めるからです。
小説において、この他人の視点というのは重要です。
自分の作品を完全に他人の視点で見れる人は、プロでもほとんどいないでしょう。
では、なぜ、他人の視点が必要なのかというと、自分で書いた作品は「自分の脳内で無意識に補完されてしまう」からです。
実際には書いてなくても、本人には「知っている」ことなので、問題なく「補完して」読めてしまうわけです。
例を出してみましょう。
ある少年がイジメられていたとします。
その現場を見た主人公がいじめっ子を倒し、少年に手を差し伸べます。
そして、少年が涙ながらに主人公にお礼を言います。
よくあるシーンですね。
ですが、ここに「実は主人公は昔、いじめられっ子で、努力によって強くなった」という設定があったとしたらどうでしょうか?
このバックボーンがあるかないかで、このシーンに対して受ける印象は違ってきます。
この場合、「作者は主人公が昔イジメられていた」ことを「知っている」ので、この助けるというシーンは感動的に思えるわけです。
ですが、実際にはそのことは「小説内には書かれていない」ので、「読者」には単に主人公がいじめっ子を退治しただけの印象になります。
この時点で、「作者」と「読者」の印象の感覚に大きなズレがおきています。
この「ズレ」が積み重なっていくと、終わりまで読んだ際の感想も「大きく違っている」わけです。
作家志望の方の小説を読ませていただいたときに、本人は「面白くて、自分でも自信がある」とおっしゃっているのですが、実際に読むと「普通」という感想になることがあります。
これは完全に「作者」と「読者」の感覚に大きなズレが生じているのです。
伝えるべき情報が書かれていないのですが、作者としては「書いているつもり」になっているので、ズレているわけです。
このズレを修正するためには、「作者も設定を忘れる」のが一番です。
なので、推敲には時間を置けば置くほどいいというわけです。
かといって、何年も寝かせておくわけにもいかないでしょう。
作品の「ネタ」には「鮮度」というものがあります。
ネタ的には今のタイミングではないといけないという場合もあるでしょう。
では、そんなときはどうするかというと、『次の作品を書き終わった後』に推敲するのです。
次の作品が書き終わったとき、あなたの意識は完全に次の作品に向けられているはずです。
そして、書き終えた作品の方が前回の作品よりも「思い入れが強い」はずです。
逆にいうと前の作品の「思い入れが薄くなった」ということです。
これは「他人の視点に近づいた」というわけです。
作品が書き終わった状態よりも頭も冷えているので、割と冷静に推敲できます。
これはプロでもあるのですが、書いている最中や書き終わったときは、「最高傑作だ」と思うのですが、いざ、冷静な頭で読み返してみると「意外とそうでもない」ということはあります。
ですが、その感想は読者も同様の感想を抱くはずでしょう。
また、この方法の良いところは「次々に作品を書く」という流れができることです。
新人賞に出すためには推敲しなければならない。
推敲するためには次の作品を完成させなければならない。
また、次の作品の推敲をするためには、その次の作品を完成させなければならない。
このような流れで、作品を量産することができます。
作品が量産できればデビューする確率が上がるのはもちろん、デビューしてからも「生き残る」可能性も高くなっていきます。
推敲は項目別にやっていく
では、次にどうやって推敲をやっていくべきかを解説していきます。
あなたはどのように推敲をやっているでしょうか?
頭から読んでいって、気になったところがあれば修正するという方式を取っていないでしょうか?
おそらく、ほとんどの方がそのような推敲方法をしているかと思います。
ですが、その方法は非効率かつ精度は低くなってしまいます。
では、どのようにやっていくかというと項目に分けてやっていくのです。
例えば、「今回の推敲」は「Aというキャラクターを追っていく」というものです。
これは作品の中でAというキャラクターに絞って、物語を追っていくのです。
Aというキャラクターという視点で見ていき、行動や感情の動き方などの矛盾や違和感がないかを見ていきます。
これは全体的に見ていると気づかなかったことでも、Aというキャラに絞って見たことで見えてくることがあります。
これを各キャラクターごとにやっていきます。
もし、途中で確認しているキャラ以外のことで気になった点を見つけた場合は、その場で修正するのではなく、メモで残しておき、後で修正するようにしましょう。
あくまで確認しているキャラクターに集中してください。
そして、各キャラクター視点で推敲した後、ストーリー全体として破綻がないかを見ていきます。
文章や漢字等の推敲は最後にした方がいいでしょう。
最初に文章や漢字などを直していくと、そこに膨大な時間が取られてしまい、キャラクターごとの推敲が「面倒」になりがちです。
そして、ベストなのは、本当に第三者に読んで貰うのがいいでしょう。
ただ、その際、注意していただきたいのは
〈小説 創作作品の感想をもらべき人〉でも書きましたが、必ず「ペルソナ」に当てはまる人に読んで貰ってください。
上の記事でも書かせてもらいましたが、ペルソナから外れた人に読んで貰うのは逆にマイナスにしかなりません。
それであるならまだ、読んで貰わない方がいいくらいです。
いかがだったでしょうか。
一言に推敲といっても、ただ、何となく書き終わったらやっていなかったでしょうか。
推敲するタイミングとやり方次第で、推敲のクォリティは大きく違ってきます。
ベストな推敲をして、ライバルと差をつけましょう。
それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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