「起承転結」という言葉は物語を創作する人であれば、必ず一度は聞いたことがあるでしょう。
そして、大体はどんなことなのかは知っているかと思います。
ただ、起承転結の「起」で何を描くべきかをしっかり把握しているでしょうか?
単に事件の起こりを書けばいいわけではありません。
また、「起」の部分を物凄く長い作品もあります。
「起」が長ければ、それだけ「物語が始まるのが長い」というわけなので、読者からしたら「いつ始まるのか?」と読んでいてイライラし、やがて本を閉じてしまうでしょう。
今回は「起」で何を描くべきか、また、分量はどのくらいかを解説していきたいと思います。
こちらを読んで、しっかりと「起」で書くべき事柄と長さを把握し、魅力あるストーリーの始まりを描きましょう。
最初に結論を書くと、起で書くべきことは下記の内容です
・場所、時間、登場人物の説明
・主人公と主要人物の紹介
・事件の始まり
次に分量ですが、「起」は全体の1割~2割程度の分量になります。
それでは詳細を解説していきましょう。
意外と書くことが多い
「起」では、そのストーリーに対して読者が「全く何も知らない」状態で読み始めるため、「説明」をしなければなりません。
このストーリーは現代の話のなのか、未来の話なのか、過去の話なのか、ファンタジーなのか、など、そこからわかっていない状態です。
なので、まずはどの話なのか、どんな世界なのか、場所はどこなのかを説明しなくてはなりません。
いきなり登場人物の台詞から入るパターンもありますが、その場合でも、必ず、世界観とそのシーンの場所の説明が描かれているはずです。
では、なぜ、最初に世界観を説明しなければならないかというと、登場人物に共感しづらくなるからです。
例えば、主人公が3人の男に囲まれてピンチというシーンがあったとします。
この世界が現代で、男というのが不良だった場合。
この世界が戦国時代で、男というのが兵士だった場合。
さて、主人公のピンチの度合いは一緒でしょうか?
もう一つ例を出して考えてみましょう。
主人公は女の子で、親から縁談を決められました。
この世界が現代なのと、戦国時代では状況が大きく異なります。
現代であれば、最悪、家出などして逃げることが可能です。
迷惑をかけるのはせいぜい、身内くらいです。
では戦国時代ではどうでしょうか。
縁談というのは戦略結婚であり、「国」そのものを揺るがしかねない問題です。
逃げ出した場合、国自体が亡ぶ可能性があるわけです。
このように、例え、先に登場人物を描いたとしても、世界観がわからなければ、一体、その状況がピンチなのか、日常的なことなのかさえ、わかりません。
そんな状態で、登場人物に感情移入しろというのは無理な話でしょう。
ジャンプ漫画で、最初に「世界観説明」をやる作品が多いのは、手っ取り早く、ここを読者に掴んでもらうためです。
もちろん、これは漫画だからできる手法です。
小説でいきなり世界観説明をしたら、速攻で本を閉じられることは間違いなしなので止めましょう。
主人公の描き方
そして、次は主人公の説明です。
ここで一点、注意があります。
余程の理由がない限り、主人公は必ず最初に出しましょう。
読者から見ると一番最初に出てくる人物は印象に乗り込ます。
また、無意識に最初に出てくるキャラクターが主人公と思ってしまいます。
鳥の刷り込みみたいな感じです。
なので、例えば最初にライバルを描いたり、ヒロインを描いたりするのは危険です。
後から主人公を出しても、ライバルやヒロインの方を気にしてしまいます。
では、最初に主人公を登場させるとして、何を描くべきかを考えていきましょう。
「俺の名前は○○。高校2年で17歳。黒髪で顔や身長、体格は普通。勉強もスポーツもそこそこできる」
なんていうふうに、いきなり「説明文」で説明する作品も、意外と多いです。
確かに「簡単」です。
ですが、逆にいうと「普通過ぎて」面白くありません。
以前、下記の記事でも書きましたが、冒頭というのは勝負どころです。
〈ファーストシーンは何を書くべきか〉
その勝負所で、「普通で面白くない」ことを書いた時点で、他の作品から見劣りします。
基本的に読者は「説明」は読みたくありません。
「説明」というのは地の文も含まれます。
なので、極限に地の文を少なくしたのが「ライトノベル」というジャンルになります。
逆に言うと読者というのは「会話」を読みたがります。
なので、主人公の説明に関しても地の文や独白などではなく、会話でやるといいでしょう。
「はあー。俺達も、もう2年かぁ。来年になれば大学受験の準備が始まるぞ。ダリ―よな」
これで、主人公は高校2年生だと説明できますね。
こんな感じで、会話で工夫して説明するだけで、随分と他の作品から抜きん出ることができます。
また、主人公の説明ですが、「書かなくていいことは書かない」ほうがいいでしょう。
なんだ、当たり前だろ、と思ったでしょうか。
ですが、この間違いは気を抜くとよくやりがちです。
上の例をもう一度見て見ましょう。
「俺の名前は○○。高校2年で17歳。黒髪で顔や身長、体格は普通。勉強もスポーツもそこそこできる」
この台詞でわかることは何でしょうか?
単に主人公が「普通」ということだけですね。
「普通」であれば、わざわざ書かなくていいのです。
日本人であれば、基本は「黒髪」です。
書かなくても読者はイメージできます。
ライトノベルでは稀に金髪だったり、ピンクだったり、青だったりしますが、キャラクター付けのためであって、「この世界では普通」なのです。
普通なら、わざわざ説明しなくてもよいのです。
では、何を描くべきか。
それは主人公が「他の人と違うところ」です。
そこを説明すべきです。
上の方で、「起」は全体の1割から2割程度の分量が望ましいと書きました。
他にも色々と書くべきことがあるのに、「普通」だと説明するのに、ページを使うなんてもったいないです。
説明すべきは、「キャラクター設定」で決めた項目を中心に説明していきましょう。
キャラクター設定に関しては下記の記事を参考にしてください。
〈
キャラクターの簡単な作り方について〉
主要人物の書き方
次に主要人物の書き方についてです。
これは基本的には主人公と同じように、「普通とは違う」部分を描きましょう。
あとは「主人公はそのキャラに対してどう思っているのか」と「主人公との関係」を明確にしておきましょう。
「関係性」に関しては必ず「明確」にしてください。
例えば、主人公の家の中でのシーンで、女の子が出てくるとします。
女の子は主人公に対して、かなり親し気に話しています。
作者としてはつい、「家の中にいるんだし、こんな砕けた話をしてるんだし、妹ってわかるだろ」と思いがちです。
ですが、読者に伝わるかというと微妙です。
妹なのか、姉なのか、幼馴染なのか、親戚の子なのか、ホームステイしている子なのか、などなど、様々なパターンが考えられます。
そして、「明言するまで」読者はずっとモヤモヤしっぱなしです。
そこに気を取られて、ストーリーが頭に入ってこないなんて危険もあります。
なので、新しい登場人物が出た場合は必ず「何者なのか、主人公との関係性」を明確にしましょう。
よくわからないキャラクターには読者も感情移入はできません。
事件のきっかけ
最後に、事件の「起こり」を描く点について解説します。
「起」とあるように、物事の「起こり」を書いて、初めて「起」が描かれたことになります。
「登場人物のことばかり」に気を取られ、主人公の日常ばかりを描いていると、「起」が長くなってしまいます。
そして、「起」が長くなれば読者は「いつ物語が始まるんだ?」とイライラします。
なので、世界観、時間、主人公をサッと説明した後は、すぐに事件の「起こり」を描きましょう。
人物紹介が長くなりそうであれば、主要人物の説明は「承」に回しましょう。
とにかく、「この物語は何の話なのか」というのを、いち早く読者に提示しなければなりません。
この物語の「方向性」と「着地点」がわかれば、読者は安心して、その物語に没頭できます。
ここで一点、注意があります。
この「起こり」の部分ですが、「この物語全体の事件」に関しての起こりになります。
中にはストーリーの本軸と関係ない事件や、喧嘩など、「物語が動くシーン」を「起」と勘違いされる方がいます。
もしくは、この喧嘩がきっかけとなって、大きな事件が起こるからといって「喧嘩の部分」が起になると思い込みをしたりします。
上の状況の場合は喧嘩のシーンが起ではなく、あくまで「大きな事件が起こるシーン」までが起になります。
そこを勘違いすると、作者は「起」を書いたと思っていても読者は「起が遅い」と思ってしまいます。
いかがだったでしょうか?
「起」は少ないページで説明することがかなり多いです。
「どこで何を説明するのか」の構成をしっかり練ってから書き始めないと、ダラダラとした「起」になってしまいます。
もし、「何を書いたらいいのか整理できない」というのであれば、箱書きから作ってみることをお勧めします。
箱書きについては下記の記事を参考にしてください。
〈箱書きとは?箱書きの使い方〉
それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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