起承転結 承で何を書くべきかを解説

シナリオライター編
前回は起承転結の「起」について解説しました。 下記から読めますので、読んでいない方は参考にしてください。 〈起承転結 起で何を書くのかを解説〉 今回は「承」についてを解説していきたいと思います。 「承」の分量は起承転結の中で一番長くなります。 全体の7割くらいが「承」になっていきます。 起で物語が始まり、「承」を受けて転へと向かって行くわけになります。 「起」で引き込んだ読者をさらに夢中にさせていくのが「承」の役割です。 では、「承」はどのように書いていくかを解説していきます。 承は比較的、自由に作者、あるいはキャラクターの思うままに走らせてもよいのですが、1つだけ注意点があります。 最低限、そこだけを守れば読者を離れさせないで済むことでしょう。 その注意点とは、結論を先にいうと『物語を後退させない』です。

結に向かってストーリーは常に前に進んで行く

物語というのは、完結、つまり終わりに向かって常に前に進んでいなければなりません。 そうでないと、読者はすっきりとして読めません。 遠回りや待たされたり、ましては戻されるとイライラしてしまいます。 ですが、中にはストーリーは山あり谷あり、遠回りした方が面白いと思う方がいるでしょう。 ですが、それは「主人公の感情」や「状況」での話です。 物語の中で主人公は何度も追い詰められ、それを突破し、また追い詰められてとピンチの連続の方が読者は引き込まれていきます。 ですが、ストーリー、物語自体は前に進んでいいかなければなりません。 こういうふうに書かれてもよくわからないと思いますので、例をあげて考えていきましょう。 例えば、野球の試合を思い浮かべてください。 野球は1回から9回があります。 1回が起で9回が結と考えてください。 つまり1回から9回までの試合がストーリーだと思ってください。 試合では投手戦だったり、打撃戦だったたり、逆転の繰り返しだったり、お互い0点のまま進んだりとまさに手に汗握る展開が繰り広げられます。 この各回がストーリー上の、山あり谷あり、紆余曲折の部分になります。 ですが、ここでもう一度、考えて見てください。 物語自体は1回から9回まで、常に「進んで」います。 8回まで進んで、いきなり6回に戻ったらどうなりますか? 「面白い」と思う以前に、「は?」と戸惑ってしまうはずです。 このように、ストーリーは常に終わりに向かって進んでいかなければなりません。 では、実際に「戻る」というのがどういうことかをストーリーに沿って考えてみましょう。 例えば、「ドラゴンボール」の設定を基本に考えてみます。 ドラゴンボールは7つ揃えると、何でも願いが叶う球です。 ということはゴールは「7つ揃える」ことですね。 この7つという部分が、野球の「9回」になります。 最初は1つか2つを持った状態でスタートします。 主人公たちが悪戦苦闘してボールを集めていきます。 そして、5つ集まりました。 これを野球でいうと大体、7,8回といったところでしょうか。 ここで突然、ボールが4つ奪われます。 手元にはボールが1つになってしまいました。 当然、ボールを取り返さなくてはなりません。 そして、苦労の末に取り戻します。 さて、ここで一旦、状況を整理してみます。 ボールを失って、取り戻しました。 取り戻した際に、主人公たちは「ボール以外」に何か得るものがあったでしょうか? 例えば、ボールを奪った奴らがボールを持っていた場合は、ボールは6個になるので、ゴールに進んでいます。 次に、6個目のボールの情報が「新たに」得られれば、これもゴールに向かって進んでいます。 これ以外にも「仲間が増える」というのも、ゴールに向かっていることにできます。 ただ、この「仲間が増える」という点は注意が必要です。 ここで増えた仲間にはちゃんと「活躍の場」を与えてください。 「この仲間がいなければ、ゴールできなかった」と思えるようなシーンを入れてください。 そうでなければ、ゴールに向かっていたとは言えません。 ゴールに必要ない存在が増えたところで、話は停滞、もしくは戻っていることになります。 そして、一番最悪なのは、取り戻した時、「何も得ていない」状態です。 「ボールを取られて取り返す」という行動の中に、何も得るものがないということは、「そのシーンはなくても成立する」ことになります。 その場合、物語は進んでいないことになりますので、読者の気持ちは冷えてしまいます。 これをやってしまう作品は本当に多いです。 小説でも、漫画でも、映画でもやってしまっている作品を数多く見かけます。 本来は60分の作品だったのを映画にするために120分に引き延ばした作品は、大体、このような状態に陥ります。 どんなに盛り上がらせようとして、派手なシーンにしても、観客は「面白い」とは思わず「引き延ばしてる」と感じてしまいます。 もう一つ例を出してみましょう。 主人公が警察で、凶悪犯を捕まえる話だとしましょう。 ゴールは犯人を捕まえることです。 主人公がすぐに犯人を捕まえてしまえば、そこで終わってしまいます。 なので、当然ながら何度も犯人を取り逃がしてしまいます。 そして、ここの「取り逃がし方」がポイントになります。 「単に逃がしてしまうだけ」なら、物語は進んでいません。 必ず犯人について、何かしらの情報を得る必要があります。 例えば、その場では主人公たちはその情報に気づかなくて、後半に気づくという場合でも、物語上では「その情報を得た」ことになるので、物語は進んでいます。 その後も主人公は何度も失敗し、逆に犯人に命を狙われるなんてこともあるでしょう。 しかし、そのたびに「なにかしらの情報」は得なくてはなりません。 物語を停滞させると読者は冷めてしまいます。 とはいえ、最初は、その切り分けが難しいでしょう。 その場合は「このシーンがなくても話が成立する」かどうかで判断してください。 もし、そのシーンがなくても話に別段影響がないのなら、「引き延ばし」のシーンになっていることになりますので、カットした方がよいでしょう。 ただし、単純にカットしても話が通じるというわけではなく、台詞を整えただけで影響がないかと考えてください。 「承」は読者を「楽しませる」パートです。 読者を気持ちよくストーリーに没頭させるために、無駄なシーンを入れず、常にストーリーを前に進めていってください。 この手法はジョジョの奇妙な冒険の作者である荒木先生の『荒木飛呂彦の漫画術』でも解説されています。 よければ合わせて読んでみると勉強になると思います。
いかがだったでしょうか。 「承」の部分を何気なく書いている方も多いです。 それはプロの小説家、ライターでも多いくらいです。 つまり、そこをしっかり身に着ければ、プロにも匹敵する、上回る作家になれるということになります。 一度、足を止めてしっかり見直してみてはいかがでしょうか。 それでは今回はこの辺で。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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