今回は前の記事で、少しだけ話を出した想定読者(ペルソナ)の作り方について解説していきたいと思います。
これはゲーム作りだけではなく、小説やシナリオはもちろん、プランナーがイベントを作る際にも必要な考え方なので、是非、今回の記事を読んで参考にしていただければ幸いです。
ペルソナというのは、マーケティングの用語になります。
商品を作る際、または紹介していく際にどういった購入者を想定するかを考える際に作るものになります。
では、なぜペルソナを作る必要があるのかを解説します。
ペルソナから外れると売り上げが極端に減る
例えば、物凄く効果のあるダイエット商品があるとします。
その商品を痩せている人に紹介した場合、売れるでしょうか?
もしかすると、知人のために買うなんて人がいるかもしれませんが、それだとしても、本人が使うわけではないので、その人に売ったというわけにはならないです。
では逆に『健康診断で太り過ぎと指摘された人』に紹介した場合はどうでしょうか?
痩せている人に紹介した際と比べてどうでしょう?
売れる可能性がかなり高くなります。
つまり、『同じ商品』でも、紹介する人たちの違いで、売り上げが変わってくるということです。
これは創作である物語を作る際にも同様になります。
同じ小説でも見せる人によって、「面白い」と思う割合が違ってくるということです。
もう一つ例を出すと、『鬼滅の刃』をジャンプで連載した場合と、コミックボンボンで連載した場合では結果は違っていたはずです。
もし、コミックボンボンで連載していたら、早期に打ち切りになっていたでしょう。
少し話が逸れますが、『進撃の巨人』は最初、ジャンプに持ち込んで門前払いをされた、という話が有名です。
この件に関して、よく、「担当者の見る目がない」と言う人がいますが、これは違います。
単にジャンプの読者層に対して、『進撃の巨人』は合わないと言っているだけです。
つまり、進撃の巨人はジャンプが持っている読者層のペルソナから外れている、ということなのです。
おそらく、ジャンプで連載していたとしても、打ち切りになっていた可能性が高いでしょう。
そういう意味で言うと、そのジャンプの担当者は正しい判断をしたと思います。
実際、これだけ進撃の巨人が売れたのは、ジャンプで連載しなかったからこそという点も大きいでしょう。
また、よくYouTubeで「なろう系」の作品をこき下ろしているチャンネルがあります。
これも、単にそのチャンネルを作っている人が、その作品のペルソナではないだけです。
その作品を面白いと思う人が多いからこそ、書籍化しているはずですし、その人たちをペルソナとして書き、面白いと思って貰えるなら、それでよいのです。
ただ、その『面白い』と思う人の数が少ないと、打ち切りになってしまうので、注意が必要でしょう。
この辺りはペルソナを作る際に調整していきましょう。
話を戻しますが、これが『同じ作品』でも、読者が違えば、売り上げが変わるということになります。
もし、『ONE PIECE』や『名探偵コナン』が少年誌ではなく青年誌で連載していたら、これほど爆発的に売れることはなかったでしょう。
読者にあった作品にしなければ、もちろん、読者はついてきてくれません。
そして、この『読者』の部分が『ペルソナ』になるということです。
ユーザーに面白いと思って貰うために設定する
『全ての人が面白いと思う作品は存在しない』ということがまず、念頭に置いてください。
ですので、次はどの人たちに面白いと思って貰いたいかを想定するためにペルソナを作成します。
小学生向けと青年向けでは、『面白い』と感じるところが違います。
もちろん、男性向けか女性向けかでも、違ってきます。
そこの部分を絞り込んでいくことで、より、想定したペルソナに対して面白いと思って貰える確率は上がっていきます。
なので、18歳、男性、趣味はゲームで…、などいった感じでペルソナを作り込んでいきます。
ただ、このペルソナの作り方ですが、サイトで調べてみると、一人の人間を細かく設定するように書かれているところが多いです。
イメージ的には、キャラクターを作る際の履歴書に近い感じでしょうか。
ですが、これはあくまで、商品に対してのマーケティングするために作る項目になります。
物語を作る場合のペルソナの作り方は、物語用に作る必要があります。
例えば、「年収」や「朝型か夜型」、「お小遣いの金額」、「好物や嫌いな物」などは物語を読む際の『面白さを感じる部分』には関係ありません。
ペルソナを作る際に項目に入れても良いですが、ほとんど使うことはないでしょう。
では、物語用のペルソナはどう作ればよいのかを解説します。
それは、『面白いと感じる』部分に直結した箇所になります。
まずは当然、男性か女性か、という部分や年齢は『面白いと感じる』部分に関連します。
あとは、趣味も重要になります。
『ゲーム好き』か『漫画好き』か『映画好きか』で、面白さを感じる部分が結構変わってくるかと思います。
あとは、『どんなジャンルが好きか』という部分は重要です。
コメディが好きなのか、恋愛ものが好きなのか、推理物が好きなのか、スポーツものが好きなのか、その項目に設定するペルソナに寄って、そもそものジャンルが確定していきます。
ただ、ここでスポーツものが好きで、特に野球が好きで…と細かくあげていく方法もありますが、簡易的な方法としては『好きな作品』を挙げることです。
そして、この好きな作品の項目は、必ず『複数』挙げてください。
ここで、一つだけしか挙げないと、その作品のパクリのような作品しか書けなくなります。
また、この好きな作品のジャンルは同じでなくて構いません。
とにかく、複数挙げてください。
その複数挙げた作品の中で、共通して『面白いと感じる部分』というのを考えます。
そして、その面白いと感じる部分に沿って、作品を作っていくという流れになります。
ここさえ決まれば、OKです。
次に、さらにペルソナを作り込む意味に関して解説します。
例えば、家族構成を考えた際に『妹』がいるというペルソナにした場合、作品中に『妹』を出す際の方向性の指針になります。
妹がいない人の、いわゆる理想の妹を作品内で出した場合はどうでしょうか?
本当の妹がいるペルソナに対して、その描写は刺さるでしょうか?
「いやいや、こんな妹なんて存在しないよ」となる可能性があります。
また、ペットに猫を飼っているというペルソナにした場合はどうでしょうか。
猫の描写をする際に、「いや、猫はこんな仕草はしないよ」となった場合、一気に冷めてしまう可能性があります。
逆にリアルな猫の描写をすると「うんうん、こういうことするする」となれば、一気に『共感』が生まれます。
職業が看護師というペルソナにした場合、簡単な医療用語を一々解説していたら、「もう知ってるよ!」となりイライラしてしまうでしょう。
つまり、細かくペルソナを作り込めば、細かい描写に対してこだわることができ、より読者に共感を持たせることができます。
なので、あまり知らない分野の項目をペルソナに当てはめるのは止めた方が無難でしょう。
あと、ここで一点注意があります。
ペルソナを作り込めば作り込むほど、設定したペルソナに当てはまる読者に『面白い』と感じてもらう確率は高くなります。
ですが、逆に作り込むということは、『絞り込む』ということになります。
つまり、絞り込めば絞り込むほど、『当てはまらない人も多くなっていく』ということがあげられます。
これは上でも書いたのですが、絞り過ぎると『面白いと思う人の数が減っていく』という側面もあるので、注意が必要です。
自分の作品は自分でマーケティングしていく
こちらは少し番外編というような項目になります。
もし、シナリオライターではなく、小説家を目指す、または先に実績を作ろうとしている場合ですが、注意点があるので書いておきます。
よく新人賞に対しての対策の本に、『応募するレーベルを調べてから、そのレーベル用に書きましょう』と書いてあります。
これは当然のことです。
つまり、進撃の巨人をジャンプには持って行かないようにしましょうということです。
稀にストックしている小説を、締め切りが近いという理由で、「とりあえず送ってみる」という人がいます。
正直、これはお勧めできません。
高確率でペルソナが違うということで、審査で落とされます。
ですが、これはまだいい方です。
もし、何かの間違いがあり、受賞してしまったらどうでしょうか?
そのレーベルの読者層が、あなたの作品のペルソナと大きく違っていた場合、どうなるでしょうか?
おそらく、高確率で売れることは無く、単巻もしくは3巻くらいで終了することになるでしょう。
そうなった場合、あなたは受賞したが『売れなかった作家』という肩書がついてしまいます。
さらに、受賞して出した作品は、『他のレーベルでは出すことができません』。
つまり、進撃の巨人を間違ってジャンプで連載になってしまい、3巻で打ち切られてしまったら、もう二度と進撃の巨人は『別冊少年マガジン』では出せなくなるということです。
あなたが必死に書いた作品が『売れずに終わる』ことになってしまいます。
もし、別のレーベルで出していたら大ヒットし、誰もが知る作品になっていたかもしれないのに、です。
そう言った意味でもペルソナを作ることは重要です。
想定したペルソナが、そのレーベルに合っているか、もしくはそのレーベルの読者のペルソナを作った上で、作品作りをしたほうがいいでしょう。
それでは、今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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