シナリオライターの監修のやり方について

シナリオディレクター編

ゲーム会社にシナリオライターと入った際、ライターとして書くだけではなく、他のライターが書いたシナリオを監修するということが高確率で発生します。

シナリオチームなどの専門の部署などがあるところは監修するということはあまりないとは思いますが、それでも、他のライターが書いたものを読む、または確認するということは出てくるでしょう。

今回は、監修を任された際に、どのように監修していくかのポイントを解説していきたいと思います。

監修は面白さを担保するものではない

まず、始めに念頭においてもらいたいのは、「監修=面白さ」というわけでは「ない」ということです。

監修したからとって、「面白くなる」というわけではないということになります。

例を出して考えてみましょう。

現在『ONE PIECE FILM RED』が公開されています。

売り上げは好調で、歴代シリーズの中で最高となったというニュースが出ました。

ですが、このシリーズ最高の売り上げを叩き出している『ONE PIECE FILM RED』ですが、見た人全員が「面白い」と言っているわけではなく、「賛否両論」です。

天下のワンピースでさえも、全員を面白いと言わせることはできないわけです。

言ってしまうと、「見る人によって面白く感じるものは違う」わけですから、そもそも「面白さを担保」することが不可能だと言うことはわかっていただけるのではないでしょうか。

ただ、ここは割と勘違いされることが多いです。

上司から、ライターから上がってきた原稿を監修してくれと言われ、監修して実際にリリースしたとしましょう。

ですが、ユーザーからの評判が悪く、上司からも面白くないと言われたとします。

その場合、「あなたのせい」にされがちです。

私も実際にそのようなことがありました。

有名な作家にシナリオを発注し、私が監修したのですが、リリース前に上司に「ストーリーが面白くない」と怒られました。

そして、責任を取らされる形で、そのプロジェクトから外されたという経緯がありました。

これは、最初に私が上司に「監修することは面白さの担保ではない」というのを説明しておかなかったことによるミスでもあります。

では、こうならないようにするためにはどうするべきかというと、簡単です。

それは「上司にチェックしてもらう」ということです。

つまり、「これでOKかどうか」というのを上司に見てもらうことで、上司の責任になります。

仮に、それでユーザーから面白くないと言われたとしても、監修をしたあなたのせいではなく、「OKを出した上司」の責任になります。

こう書くと責任の押し付け合いのように見えますが、会社という大きな組織に所属しているのなら、当然の自己防衛です。

例えば、その上司がシナリオチームのリーダーだったとします。

そのシナリオチームのリーダーも責任回避するためには、プロジェクトリーダーに見てもらいます。

プロジェクトリーダーも自信がなければ、その上であるディレクター、プロデューサーにチェックしてもらいます。

ディレクター、プロデューサーがOKを出したものであれば、責任はディレクター、プロデューサーがとるべきとなります。

その代わり、上司が「面白くないから直してくれ」と言われれば、「直す」のは監修およびライターの仕事になります。

つまり、誰しもが自分の責任に基づいて、自分が自信を持って良いというものを出してダメであれば、納得できるはずです。

だからこそ、しっかりと読んだ上で判断してもらうことが大切です。

逆に監修の仕事はどういうものかというと、それは「シナリオの質を担保」することです。

では、シナリオの質を担保するというのはどういうことか解説していきましょう

監修のポイント

監修するポイントはいくつかあります。

それでは順番に見ていきましょう。

誤字脱字

まず、見るべきところは誤字脱字です。

ライターもそれぞれで、納品前にチェックするライターとチェックせずにそのまま送ってくるライターもいます。

明らかに見直してないだろうと突っ込みたくなるものも少なくありません。

誤字脱字もそうですが、誤変換も割と多かったりします。

あとは、漢字を開いているなども、統一されていないこともあります。

「取る」と漢字で書いていたのが、他の部分では「とる」とひらがなになっていたりと、統一されていない場合は、統一しましょう。

ただ、この漢字の開きに関しては、ルールを決めておくと良いでしょう。

シナリオ単位で揃っていても、全体で見るとバラバラになっているのは良くありません。

また、使ってはいけない表現などもチェックが必要です。

性的や差別用語などもしっかりと確認しておきましょう。

これも用語の一覧を作っておくと良いでしょう。

場合によっては、エンジニアにチェックするシステムを作ってもらえることもありますので、相談しておくのも良いでしょう。

設定の確認

次にゲーム内の世界観などの設定の確認についてです。

ゲーム内の物語の中での設定から逸脱していないかを確認していきます。

例えば、上でも出しました「ONE PIECE」ですが、基本的には大航海時代を基盤に作られています。

なので、一般市民が車に乗っていたり、飛行機などが出てくると「おかしい」ということになります。

このようにストーリーの世界観から外れた描写がないかなどもしっかりチェックしていきます。

ライターも把握しているとはいえ、完全には把握しきれていない場合もあるので、監修の際にしっかりと見ておきましょう。

ここが崩れると、世界観を大事にしているユーザーが一気に冷めてしまいます。

設定のチェックをするには、まずはあなた自身がしっかりと世界観を把握していないといけません。

日ごろからしっかりと、世界観を把握しておくようにしてください。

また、これは資料を作っておいた方がいいです。

忘れていてもすぐに確認できますし、複数で監修する場合は、「辞典」という形で使えるからです。

複数人の場合、全員の認識が一致しているとは限りませんので、認識を一致させるという点でも資料は必要になってくるでしょう。

キャラクターの台詞および性格

次はキャラクターについてです。

特に口調については細心の注意を払ってください。

一人称や三人称、つまり自分のことを何と呼ぶか、他の人を何と呼ぶかなどのブレがないかなどです。

「わたし」なのか「私」なのかも、違ってはいけません。

他人に対しても「さん付け」なのか「呼び捨て」なのかというのも重要です。

あとは語尾などもしっかり見ないといけません。

また、台詞だけではなく、行動についても確認しましょう。

戦いの際に、率先して突っ込んでいくタイプなのか、後ろで震えているタイプなのか、戦闘を楽しむキャラなんていうのもいますので、そのキャラクターに合った行動をしているかも確認のポイントです。

さらにキャラ同士の関係性などにも気を配らなければいけません。

相手のことをどう思っているのか、どういう関係かで、行動も変わってきます。

キャラクター周りは売り上げにも直結しているので、本当に注意が必要です。

下記の記事でも、キャラクターについて解説しているので、合わせて読んでみてください。

キャラクターの恋愛要素について

ストーリーの流れ

最後にストーリーの流れについてです。

ストーリーの流れがおかしいと思った場合は修正が必要です。

ただ、あくまでストーリーの流れがおかしい場合のみにしてください。

上でも書きましたが「面白い」という観点で修正してはいけません。

つまり、「こうすれば、もっと面白くなる」という感覚で直してはいけません。

それは「あなたが面白い」と思っただけで、他の大多数のユーザーから見ると「面白くない」と思う場合もあります。

そうなった場合、直したあなたの責任になってきます。

また、ライターの意図なども汲んだ上での調整が必要です。

あとはわかりづらい表現なども、直していく必要があります。

まとめ

このように、監修は「シナリオの質」の担保と向上が目的となっています。

急に監修してくれと言われて、何をどう見ればいいか迷った際は参考にしていただければと思います。

とにかく、監修は「面白さを担保するものではない」ということを念頭に入れてやっていきましょう。

それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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